「With QUESTION」 5周年 特別対談 07
「QUESTIONは使わな損」。着物メーカーの事業創出の背景にあった「オール京信」での支援
コミュニティ・バンク京信(以下、京信)が運営する共創施設「QUESTION」は、オープンから5周年を迎えました。連載企画「With QUESTION」では、これまで関わってきた人々の視点から、「QUESTIONとは何か?」をあらためて問い直していきます。
今回のゲストは、年間約2000点の着物・帯を手がける株式会社西捷(にっしょう)の代表・木村裕さん。次世代に向けた新たな事業創出を模索していた同社にとって、QUESTIONでの商品開発講座「ANSWER」への参加は、大きな転機となったのだとか。
その後、新たな方向性に向けた取組が広がっていった背景には、西捷と京信の営業担当者、QUESTIONが三位一体となって進めるチームの力がありました。
お話を伺った人
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木村 裕さん 株式会社西捷 代表取締役
1950年代より続く西陣の機場(はたば)を2019年に法人化。事業成長に取り組みながら、地場産業の課題をテーマに大学で3年間授業を担当。コミュニティ・バンク京信が主催する商品開発講座「ANSWER」で、リブランディングと新商品開発に取り組み、金融機関の支援を受けて2024年度から台湾・フランス・アメリカへと事業を展開し、さらなる成長を目指している。
https://nissyo-kyoto.jp/ -
山田 拓平 コミュニティ・バンク京信 人事部課長/元丸太町支店 企業金融担当
京都生まれ、京都育ち。2011年コミュニティ・バンク京信に入社。地域の個人・法人のお客様への金融支援に加え、事業そのものに踏み込む本業支援に取り組む。2022年4月から2025年3月末まで丸太町支店に在籍し、西捷様を担当。現在は人事部にて人材採用や研修・教育を通じて組織づくりに携わっている。
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平野 哲広 QUESTION 館長
大阪生まれ、京都育ち。2001年コミュニティ・バンク京信に入社。営業店と本部を経験し、2024年4月にQUESTION館長に就任。コミュニティマネージャーとして金融の枠を飛び越え、様々な人や知識、知恵、情報とつながり、人と人、事業と事業をつないでいる。伏見のお酒が好き。趣味はサッカー観戦とギターを演奏すること。
※プロフィールは2026年3月末時点の情報です
「ANSWER」が会社のターニングポイントに
平野 西捷さんは、いつ頃から京信とお付き合いをいただいているのでしょうか?
木村 2023年ごろです。「S認証を取りませんか?」とご提案いただいたのが最初ですね。
平野 「ソーシャル企業認証制度 S認証」ですね。「世のため人のため」に取り組む企業を認証するもので、京信ではお客様の取得をサポートしています。
木村 以前別の銀行さんに事業の相談に行った時は「財務面のコンサルタントとして使ってください」と言われましたけど、京信さんの最初の提案はお金と全く関係がなくてびっくりしました。その後、担当が山田さんに変わって、雰囲気の柔らかさに再び驚きましたね。これまでの金融機関の人とはイメージが少し違ったので(笑)
平野 山田 (笑)
木村 でも、印象は良かったですよ。親しみやすいけど、受け答えや提案の中身はしっかりしていました。
山田 当時の西捷さんは、本業で盤石な売上がある一方、新たな売上の柱を模索されていた時期でした。現在はアートやインテリアの分野に進出し、事業の多角化を進められていますが、当時はそういった動きがまだ固まっていない段階でしたね。
木村 僕らはメーカーとして、職人へ仕事を出すことを大事にしています。発注を大きくするのが使命であり、そのためには売上が必要です。職人の仕事を増やすためにも、何より会社を存続させるためにも、新たなことをやっていかなあかんと思っていました。
山田 社長に和装業界や会社の将来、ビジョンについてお聞きし、しっかりと話し合っていく中で、事業そのものの棚卸しが必要だということが見えてきました。そこで、商品開発講座「ANSWER」をご紹介させていただきました。
平野 事業者、QUESTIONのパートナーである有限会社セメントプロデュースデザイン、京信の3社で、半年かけて商品企画を練り上げる講座ですね。
山田 それ以前から木村社長は積極的に単発のセミナーに参加してくださっていましたが、ANSWERはかなりハードです。聴講型の座学ではなく、実践を通じて自社の強みや課題、競合分析など、事業そのものを掘り下げ、徹底的な議論を繰り返す、地味で泥臭いプロセスが求められます。それでも社長は、「従業員を含めてみんなで取り組む」という決断をしてくださいました。
木村 山田さんの熱量がすごかったんですよ。うちの糧になると思いましたし、コンサルを受けるより費用面も抑えられるので、それならやってみようと思いました。
平野 講座には山田も一緒に参加したと聞いています。
木村 金融機関の担当者と一緒に課題に取り組むなんて新鮮でしたけど、結果的にプラスになりましたね。さまざまな角度から会社の分析をして、それをひとつひとつ整理して資料にまとめていったのですが、山田さんがバンカーの立場から熱心に内容を見てくれたおかげで、確実に精査されていきました。
山田 客観的な目線や金融機関人としての視点をなるべく加えたいと思って、何度もやりとりをさせていただきました。西捷さんがすごいのは、社長だけでなく、役員や従業員の方も一緒に参加されたことです。シビアでハードな講座に経営者だけでなく従業員も一緒に取り組むことで、会社としての一体感やモチベーションが増していったように思います。会社の課題や強みの共有を通じて、皆さんの目線が社長とそろっていくのを感じました。私自身も西捷さんの解像度が上がって、担当者としてもご一緒できてよかったと思います。
木村 従業員からは 「しんどい」って言われましたけどね(笑)
山田 実際、本当に大変でした(笑)
木村 だからこそ、みんなが同じフラッグを目指して進められる状態が作れたと思います。中長期の方向性もはっきりしましたし、ANSWERはうちの会社のターニングポイントになりましたね。
企業、担当者、QUESTIONの三者のラリーが生んだ成果
山田 ANSWERを通じて今後の事業の方向性が整理され、具体的な形が見えてきた頃、当金庫が企画した台湾での商談会「京都旅行」にもご参加いただきました。
平野 実際に海外で商品を販売する機会を設けることで、海外販路拡大に向けたテストマーケティングを行う企画ですね。
木村 テストマーケティングは初めてでしたが、ANSWERで「伝統技法を生かしたアートやインテリアの分野にチャレンジする」と固まったところだったので、ワクワクしましたね。
実際に、台湾の大手半導体メーカの重役の方から、アートパネルをご購入いただくことができました。
山田 成功体験を持ち帰れたのは、QUESTIONのコミュニティマネージャー・早川の存在も大きかったと思います。彼はANSWERの企画運営に携わっており、そこでの西捷さんの状況を踏まえた上で「京都旅行」を紹介してくれました。
木村 ピッタリのタイミングでしたね。新たな市場で「こういうものが売れるんだ」というチャンスに気づかせてもらいました。
山田 QUESTIONという箱があり、そこにさまざまな強みを持つコミュニティマネージャーとパートナーがいる中で、お客様と営業担当者、QUESTIONの三者でラリーができたからこその成果だったと思います。
担当者は金融のプロとして財務面のアドバイスやビジネスマッチングを行うものの、自分の力だけでは限界がある。だからこそ、QUESTIONを含めた三者の関係を築くことで、お客様への支援の幅も増すと思います。
木村 山田さんとQUESTIONの皆さんがいろいろな方とのマッチングをしてくださるのもありがたかったです。僕としては、やはり京信さんの得意先の数は魅力的ですから。
その後も、行政の支援事業を提案いただいたことや、海外販路に強い事業者とのマッチングも大きかったなと思います。
山田 アート・インテリア事業の方向性が固まってきたところで、行政の支援事業の採択を経て、海外市場に向けた商品を開発し、フランス・パリで開催される国際的な展示会へ出展販売するプロジェクトにも挑戦いただきました。
プロジェクトメンバー兼事務局の事業者さんは、伝統工芸の技術力を活かしながら、リブランディングを加え新たなマーケットに売り出すことを得意とされており、高級ホテルのアート監修なども手掛けておられることから西捷さんの目指す方向性と一致すると思いご紹介させていただきました。
木村 おかげさまで、アートとインテリアの分野でのチャレンジを一つの事業として進めていく未来が見えたと思います。
その流れから、パリの有名ファッションブランドと新たな契約を結ぶこともできましたし、僕らだけでは考えられない有名企業との商談の機会もいただきました。最近では、QUESTIONからの紹介を通じて、ロサンゼルスなど新たな地域への出展も試みています。
それは山田さんがビジネスマッチングをしてくれたおかげです。お金を貸すだけでなく、企業を成長させるための伴走をしてくださっていることに感謝しています。売上を作るきっかけはいただいたので、あとは自分らで努力していかないと、と思っています。
QUESTIONは「使わな損」
平野 QUESTIONを利用する前後で、印象はどう変わりましたか?
木村 最初は「あの『はてな』は何やろう?」という感じでしたが、今では「使わな損」と思っています。
ただ、山田さんからの紹介がなかったら、今も何をやっている場所か知らないままだったかもしれないですね。
平野 営業担当者からの情報提供が重要ですね。
山田 まずは私たち担当者がお客様と一緒にQUESTIONに行くことが大事だと思います。お客様の多くはQUESTIONの存在自体はご存知ですが、活用までは踏み込めていないことも多いです。
私自身、QUESTIONに行くタイミングが増え、コミュニティマネージャーとのつながりができたことで、「知っているだけの場所」から「お客様をお連れする場所」となり、活用の仕方が理解できるようになりました。
木村 担当者の方には、QUESTIONの活用の仕方を教えてくれるメンターであってほしいです。僕の場合、何にでもまずは興味を持とうと考えていて、山田さんもそれを理解してくれているので、QUESTIONのセミナーやイベントを幅広く紹介してくれていました。僕が参加するだけでなく、従業員に「行ってみる?」と紹介することもありますね。
それによって金融面でも頼る部分が大きくなっていった実感もありますし、京信さん、上手に戦略立ててやってはるなぁと思います(笑)
山田 営業担当者の目線で振り返ると、QUESTIONの一番の価値は、そこにいる「人」です。コミュニティマネージャーの得意領域を生かしてアドバイスをもらえたり、さまざまな専門分野のパートナーを紹介してもらえたりもする。課題が曖昧な状態でも壁打ち相手になってくれる、頼れる存在です。
自分と同じ温度感で会社や社長を理解している人がQUESTIONにもいるということは心強いです。チームとしてお客様に向き合えるのはありがたいなと思います。
平野 企業の課題が複雑化してるからこそ一人で向き合うには限界がありますし、「オール京信」で連携していけるといいですよね。
山田 私は現在人事部に異動しましたが、QUESTIONは京信の理念や目指す方向性の象徴になっているのを感じます。採用の場面でも必ず紹介をしますし、学生の皆さんや大学のキャリアセンターの方、他の金融機関の方など、QUESTIONは珍しい取組だと注目いただいているように感じます。
平野 企業様はもちろん、いろいろな方から「使わな損」と言っていただけるように、まだまだ頑張っていかなければと気が引き締まります。
木村 初めての人に向けて「コミュニティ・バンク京信とQUESTIONの使い方講座」をやってほしいです。自分が使ってよかったと思うからこそ、みんなにも利用してほしいんですよ。
僕も視座を高めてもらえる場所として、今後も利用させていただきたいです。2階のコワーキングスペースにいる人たちとも何かチャンスがありそうな気がしていますし、まだまだ面白そうだなと思います。
平野 また気軽に遊びに来てください。合いそうな方がおられれば、おつなぎします。
木村 ぜひよろしくお願いします。

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