「With QUESTION」 5周年 特別対談 09
みんなでごはんを作ると、なぜか仲良くなる。DAIDOKOROがQUESTIONで実践する「お客さん」にしすぎない場づくり
コミュニティ・バンク京信(以下、京信)が運営する共創施設、QUESTION。本連載「With QUESTION」では、オープン5周年を記念し、「QUESTIONとは何か?」をあらためて問い直していきます。
連載9回目に登場するのは、1階の「CAFE BAR HIROBA」と8階のコミュニティキッチン「DAIDOKORO」を運営する株式会社Q’sの皆さん。
食を通じて人と人の交流を促してきたQ’sの目に、QUESTIONはどう映っているのでしょう?
お話を伺った人
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前原 祐作さん 株式会社Q’s代表取締役
DAIDOKOROの立ち上げから約5年間、店長として現場を牽引。地域の食材や人の思いを大切にしながら、これまで1000件を超えるイベントや宴会をコーディネート。海の未来を担う次世代のためのプログラム『THE BLUE CAMP』では京都コーディネーターを務め、海や漁業にも詳しい。
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近藤 貴馬さん 株式会社Q’s取締役
創業100年、京都中央卸売市場の老舗八百屋「西喜商店」四代目。「まちのかかりつけ八百屋」として、個人から飲食店、福祉施設まで、多様なニーズに応える地域密着型の商いを日々実践。地域に根ざした活動を広げながらQ’sの運営に関わる。
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佐藤 宇宙 DAIDOKORO店長
東京・八丈島の民宿育ち。人を迎え、食を囲む場にやりがいや地域の可能性を感じ、コミュニティキッチン事業に従事。現在は、立命館大学 食マネジメント研究科での研究と現場での実践を行き来しながら、食を軸とした持続可能なコミュニティ設計に取り組んでいる。
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平野 哲広 QUESTION 館長
大阪生まれ、京都育ち。2001年コミュニティ・バンク京信に入社。営業店と本部を経験し、2024年4月にQUESTION館長に就任。コミュニティマネージャーとして金融の枠を飛び越え、様々な人や知識、知恵、情報とつながり、人と人、事業と事業をつないでいる。伏見のお酒が好き。趣味はサッカー観戦とギターを演奏すること。
※プロフィールは2026年3月末時点の情報です
「みんなで作って食べる」のは、理屈抜きに楽しい
平野 8階のコミュニティキッチン「DAIDOKORO」はQUESTION開設と同時に作られ、1階の「HIROBA」は2024年11月にオープンしました。
まずDAIDOKOROについて聞きたいのですが、初代副館長の津田さんによると、当初8階は社員食堂になる予定だったそうですね。
前原 QUESTIONの開設準備中、津田さんと株式会社ツナグム代表の田村篤史さん、会員制のシェアキッチン&ダイニング「美食倶楽部」の本間勇輝さんの3人で、「8階をどうするか」について会議があったのを覚えています。当時、僕はツナグムの学生インターンとして、議事録を取りながら同席していました。
その中で「みんなで一緒に作る台所」というコンセプトが生まれ、運営会社として京信とツナグムの合弁会社Q’sが設立されました。そうしたご縁から僕はQ’sに入社し、DAIDOKOROの立ち上げから関わっています。
近藤 Q’sはQUESTIONと同時に作られた会社なので、同じく5周年です。振り返ると、最初はコロナ禍で、みんなでごはんを作って食べることはできなくて。
だからこそ、コロナ明けにみんなで料理をして食卓を囲むイベントができるようになって、「最高だな」と涙が出るくらいグッとくることが何回もありました。
平野 どういう瞬間に「最高だな」と思うんですか?
近藤 うまく言葉にできないんですけど、みんなで野菜や肉を切り、調理し、盛り付けて食べるのは、理屈抜きに楽しいんです。料理って、人間にとって最も原始的なエンターテイメントだなと思います。
イベントでは、参加者同士が初対面なことがほとんど。最初は戸惑いながらスタートするけれど、料理をし始めると急速に打ち解けて、ごはんを食べる頃には仲良くなっている。そういう「みんなでごはんを作って食べる」ことの力を、僕たちは何度も目にしてきました。
前原 みんなでごはんを作るとき、必ず調理しないといけないと思われがちですが、つまみ食いをしたり、キッチンの周りをうろうろしてみんなの作業を褒めたりする人が案外大事で。そういう人がいると、全体の空気が「楽しもう」という方向に変わるんです。
反対に、こちらが準備をしすぎると「作らなければ」という雰囲気が強くなってしまうし、サポートしすぎると「やってもらうのが当たり前」な空気になってしまう。お客さんが勝手に引き出しや棚を開け始めるようなバランスを目指して、試行錯誤をしてきました。
佐藤 参加者が「自分のキッチンとしてDAIDOKOROを使っていいんだ」という気持ちになると、遊び心が出てきますよね。
参加者を「お客さん」にしすぎないバランス
平野 そういえばDAIDOKOROの宴会プランで同期会を行った時、自分たちでお酒を注ぎに行ったり、Q’sの料理人に調理前の魚を見せてもらったりと、ホームパーティーの拡張版のような雰囲気がありました。
前原 おっしゃる通りで、僕らがドリンクカウンターできちんとしすぎるとアットホームさは出ないんですよ。京信の社内交流会で支店長にドリンクを作ってもらったこともありますが、それも楽しむ方向に振り切るための工夫。それができるのがコミュニティキッチンの良さだと思います。
ちなみに、イベント参加者を「お客さん」にしすぎない塩梅は、僕なりに京信をイメージしているんです。僕は京信の「コミュニティ・バンク」の考え方が好きで。京信の職員さんが、「京信の人」ではなく「〇〇さん」として、お金の貸し借りだけでない人間関係を地域の人たちと築いている姿を意識してきました。
佐藤 アルバイトを探す時も、正式に募集するようになったのは最近で、それまではDAIDOKOROのイベント参加者に「片付けも手伝ってくれる?」と声をかけて、その流れで「バイトしない?」と誘ってましたよね。
前原 ていうか、宇宙ちゃんこそふらっとDAIDOKOROに来て、ふらっと働き始めたよね。
佐藤 当時は就職するか、自分でシェアキッチンをやるか悩んでいて、5階の「Students Lab」で友だちに相談していたんです。その時に8階の話を聞いて。Q’sもDAIDOKOROも全く知らなかったけど、実際に8階を見て、「働きたい!」「どうやったら働けますか?」となりました。
近藤 食の分野で何かしたいと考える若者は増えている気がします。「豊かさとは何か」を社会が突き詰めるようになったときに、食の重要性が増しているんでしょうね。だから優秀な若者がQ’sに来てくれるのかなと。
佐藤 「飲食業界に就職するイメージはわかないけど、作るのも食べるのも好き」という子はたくさんいると思っていて。そういう子たちにとって、Q’sは飲食業の違う在り方を知るきっかけになっていますね。実際に、アルバイトを経て料理人になった子もいます。
平野 生産者やシェフの方など、普段なかなか出会わない人たちとQUESTIONでつながったことも影響しているんでしょうか?
佐藤 そう思います。DAIDOKOROの場合は出会い方も特殊で、例えばシェフの方をゲストに招いて、私たちがサポートの立場で入ることで仲間意識が生まれる。何度もお店に通ってようやくたどり着ける仲の良さに、初手からたどり着けます(笑)
平野 知らない人と協力せざるを得ない状況があるからこそ、距離が縮まるんでしょうね。
HIROBAでQUESTIONの常連を作る
平野 1階の「HIROBA」は、どういう経緯でQ’sが運営することになったんですか?
前原 1階で飲食店をやることが決まり、運営するプレイヤーの候補も複数あがっていたのですが、僕には「QUESTIONにとって一番いいのはQ’sがやることだ」という自負がありました。DAIDOKOROを運営している間もずっとQUESTIONのことを考えていたので、少なくとも変な方向にはならないはずだっていう。
近藤 彼は「Q’sを通してQUESTIONをいいビルにしたい」って思いがとにかく強いんですよ。
前原 QUESTIONは信用金庫にしかできないことをやっているビルで、だからこそ可能性があると思っているんです。そう考えた時に、僕はQUESTIONに足りないのは常連さんになってもらうための装置だと思っています。イベントなど特別な日に来る場所になっていて、それ以外の日に来る理由が少ないんですよね。
だから、HIROBAでは常連さんを作ることを意識しています。バーでは僕と宇宙ちゃんがカウンターに立って、コミュニティマネージャーみたいな感じで人と人をつなげて、会話が生まれるきっかけ作りをしていて。
佐藤 京信の職員さんがふらっとHIROBAに来てくれて、今ではみんな仲良しの友達みたいな感じです。顔見知りが多いから、良い雰囲気を作りやすいですね。
平野 そもそも業態が違いますが、DAIDOKOROとHIROBAでは考え方も変わりますか?
佐藤 脳の使い方は全然違うなと思います。
前原 例えばDAIDOKOROでは、パティシエがいちごを切っている時、目の前に子どもがきたらいちごをつまみ食いさせてあげることがあります。でも、それって信頼関係がないとできないから、HIROBAにふらっと来た人に対しては成立しないんですよ。
だからオープンからの1年半、HIROBAでは飲食店としてやるべきことを、歯を食いしばってやってきました。それがだんだんDAIDOKOROで培ってきた「らしさ」と融合しつつありますね。
佐藤 その一つが「スタッフが選ぶ本気の突き出し」ですよね。
前原 とりあえず突き出しを出すのではなく、本気で選んだ突き出しを出すことで、お客さんを驚かせようというコンセプトです。
例えば、大きなタコが目の前にあって、目の前で切って手渡せば特別感が生まれるし、お客さんはその一口に集中してくれる。そういうDAIDOKOROで培った発想が、 HIROBAの突き出しにもつながっています。
平野 HIROBAの突き出し、いつも楽しみにしています。HIROBAもDAIDOKOROも料理がおいしいですけど、どういうところにこだわっているんですか?
前原 なるべく素材をそのまま、潔く料理して出しています。象徴的なメニューは、2時間かけて火を入れる「にんじんのグリル」。飲食店ではあまり見かけないメニューだけど、おいしいにんじんはシンプルに焼いただけが一番おいしいですから。
近藤 そういう発想になるのは、生産者とつながりを持つことをQ’s設立当初から大切にしてきたからだと思います。実際に産地に行ったり、QUESTIONに来てもらったりしたことがDAIDOKOROやHIROBAの価値になっていますね。
前原 料理人が調理したおいしさもあるけれど、畑で素材を丸かじりしたときもそれと同じくらいおいしい。飲食店の視点で考えると、素材を焼いただけでメニューにはしづらいという現実もあって。だからこそ、僕らは産地や生産者さんのストーリーで補いながらなるべくシンプルに料理をしています。
「いい感じにお願いします」が一番うれしい
前原 振り返ると、QUESTIONのコミュニティマネージャーは僕らの動きに対して「?」と思うこともあったでしょうけど、無理やり意味付けをしようとせず、自由にさせてくれましたよね。そのスタンスがなかったら、この5年間は京信の皆さんが想像できる範囲内の出来事しか起こっていなかっただろうなって思います。
近藤 京信には「よくわからないけど、やってみよう」っていう懐の深さがありますよね。一般の大企業では難しい、チャレンジングな企画も許してくれるというか。
平野 「わからんけどええやん」「やってみな、わからへんやん」みたいな風土は、京信全体にありますね。
ただ、まだまだHIROBAとDAIDOKOROの価値はQUESTIONの他のフロアに伝わり切っていないなと思うこともあります。Q’sの皆さんから、何か伝えたいことはありますか?
近藤 Q’sをもっと上手く使ってくれたらいいのになと思っています。これまで立ち上げたばかりという事情もあったからQUESTIONのスタッフや京信の皆さんから支えてもらっていたところもあったけど、今は外からの声やリクエストを受け入れる余白も生まれつつある。「売上に直結しないかもしれないけど、QUESTIONの価値が高まるならやった方がいい」ことも受け入れられますから。
前原 僕らもやりたいことをちゃんと伝えていかないといけないですね。
平野 例えば、どんなことをやりたいですか?
前原 僕らは「日本一の宴会屋」になりたいんですよ。年間300件近くのイベントをやっていますが、最も数を重ねてきているのは宴会です。みんなで同じごはんを囲み、初めての人と仲良くなり、親しい人と普段できない話をする宴会の中にこそ、「食文化を未来につなぐための可能性」があると感じています。
佐藤 宴会を通じて食の楽しみを伝えていきたいですね。生産者とつながることで、その先にいる消費者へ食の価値を伝える役割を担いたいです。
前原 宴会の中でも、いろいろな会社のホームパーティーをやりたいと思っています。僕らが培ってきた良さが発揮できる気がするんですよ。
平野 京信の支店の営業にとっては、HIROBAやDAIDOKOROはお客様を深く理解する上で活用できるなと思っています。普段は金融機関人としてお客様と接していますが、ここでなら全然違う話ができます。2026年4月にHIROBAで行った「京都アトツギ酒場」でも、お客様と気兼ねなく話せて、一瞬で距離が近づいた感覚がありました。
そういう使い方はもっとできるなと思います。イベントをするにしても、「いい感じにお願いします」って信頼して言えます。
前原 「いい感じにお願いします」って言われたいですね。それが一番うれしいです。
佐藤 Q’sに何を委ねたら上手くいくのか、わかりにくい面もあるかもしれないですね。検索して調べてもらうより、間にコミュニティマネージャーを通していただけるとやりやすいのかな。
前原 僕らがやっているのは「みんなでごはんを作って仲良くなろう」ってことだけど、自分たちで言うとチープになるんですよ。だからこそ、紹介してもらえるとありがたいですね。
近藤 そういう意味で、QUESTIONとQ’sは相性がいいですよね。お互いにもっと距離を縮めて、一緒にQUESTIONの価値を高められたらいいなと思います。

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