「With QUESTION」 5周年 特別対談 05
学生のための場づくりは、未来への投資。Students Labで生まれ続ける出会いと変化
コミュニティ・バンク京信(以下、京信)が運営する共創施設「QUESTION」。オープン5周年を記念する連載企画「With QUESTION」では、これまで関わってきた皆さんと共に「QUESTIONとは何か?」を改めて考えています。
今回ご登場いただくのは、QUESTIONにある学生のためのオープンスペース「Students Lab」を運営・管理するNPO法人グローカル人材開発センターの山田埜さんと、インターン生の溝川彩夏さん。学生が主役のフロアがどのようにして生まれ、ここでどんな出会いや取組が育まれてきたのか、詳しくお話を伺います。聞き手はQUESTION館長の平野哲広が務めます。
お話を伺った人
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山田 埜さん グローカル人材開発センター チーフコーディネーター
京都市生まれ。嵯峨美術大学短期大学部日本画コース卒業。市内のアート複合施設ディレクターアシスタントを務めた後、グローカルセンターに入職。主にQUESTION/Studnets Labの運営、多世代ワークショップデザイン研修、企業向けの組織開発ワークショップ、高校生向けAL運営、外国人起業家コミュニティー(KIEC)運営、インターン育成などを担当。また個人活動としてPechakucha Night Kyotoの運営メンバーとしてモデレーターを務めている。
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溝川 彩夏さん グローカル人材開発センター インターン
2003年生まれ京都市出身。立命館大学法学部在籍中。高校2年生の夏から約半年間、2020年度Glocal Shift Programmeに参加したことがきっかけで、2022年5月よりグローカルセンターにてインターン活動を始める。普段はStudents Lab運営、イベント企画/運営、その他様々な業務の補佐を行う。趣味はゲーム、読書、水彩画等、インドアなこと全般。自宅の積読は50冊を超え、読むスピードが追い付いていない。
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平野 哲広 QUESTION 館長
大阪生まれ、京都育ち。2001年京都信用金庫に入庫。営業店と本部を経験し、2024年4月にQUESTION館長に就任。直前に在籍していた企業成長推進部では、部長として創業支援やビジネスマッチング、商談会の企画運営、クラウドファンディングの組成、補助金申請支援などの本業支援業務を統括。QUESTIONでは、いろんな方を巻き込みながら勉強会の開催やコミュニティ形成をしていきたい。伏見に住んでいるので、伏見のお酒が大好きです!
学生たちが集い、居心地よく過ごせる「基地」
平野 埜さん(山田埜さん。以下同じ)はQUESTIONの立ち上げの頃から関わっているんですよね。改めて経緯を教えてもらえますか?
山田 2018年の冬、新しい施設を作るにあたって、学生との関わりが深い団体として「ぜひ一緒に携わってほしい」と京信さんよりグローカル人材開発センター(以下、グローカルセンター)にお声がけをいただきました。2019年の春には開設準備室ができて、週1回、本店に丸一日こもってミーティングをする日々が始まりました。
平野 当時はどんなことを話し合っていたんですか?
山田 初めの2ヶ月くらいはコンセプトづくりをしていました。京都の人たちが「このまちに住んでいて良かった」と思えるような地域社会を作りたい、QUESTIONがそのきっかけの場所になるといいよね、と話し合ったのが印象に残っています。
平野 まさにQUESTIONの原点ですね。
山田 金融機関が共創施設をつくる意義や、未来の金融機関のあり方についても、たくさん話しましたね。ただ預金をするんじゃなくて、「京信にお金を預けたら、社会に還元されるんだ」と認識して選んでもらえるように、個人へのアプローチもしていきたいと。
平野 金融機関との共創について、埜さんは最初どう思いましたか?
山田 当時はまだ20代半ばでしたし、金融機関についてあまり理解できていなかった気がします。今と比べたら解像度は低かったと思いますね。
平野 ある意味、先入観を持たず関わってもらえたのかもしれないですね。Students Labの構想はどんなふうに考えていったんですか?ワンフロア全部が学生専用って、けっこう思い切っていますよね。
山田 当初はフロアの中央だけがオープンスペースで、周りは貸しオフィスにするという構想でした。でも最終的には京信の理事長の榊󠄀田さんが「全部オープンにしよう」と決断されて、今の形になりました。内装やインテリアはグローカルセンターに一任していただいたので、テーブルや棚はここがオープンしてから学生たちと一緒に1日かけて手づくりしたんですよ。近所の家具職人さんから譲り受けた端材を使って作りました。
平野 ソフト面ではどんなことを話し合ったんですか?
山田 準備室のチームやグローカルのメンバーとも話し合う中で、「基地」というキーワードが出てきました。学生たちが、大人の目や社会からのジャッジメントと距離を取りながら、自分たちがやりたいことができる、会いたい人に会える場所にしたいという思いは、当初からずっとブレずにありますね。
平野 当時思い描いていたものが今、実現できていると感じますか?
山田 そうですね。中学生から大学生、社会人学生まで、さまざまな人が集まって、自習をしたりゼミやプロジェクト活動をしたり、自由に過ごしてくれています。最近は地元の高校生のサードプレイス的な機能が大きくなってきたのですが、彼らが居心地よく過ごせる場づくりを、大学生のインターンたちが担ってくれているのが感慨深いですね。
みぞ(溝川彩夏さん。以下同じ)は高校生の頃から来てくれていて、Students Labを一緒に作っていくインターンとして入ったのも彼女が第1号。この場所で私たちがやりたかったことを体現してくれている存在だと思うので、みぞに話を聞いてもらえたら。
チャレンジを通して、一人ひとりが成長できる場所
平野 溝川さんとStudents Labとの関わりは、何がきっかけだったんですか?
溝川 高2のとき、幼なじみに誘われて、グローカルセンターが高校生向けに行っていたアクティブラーニングプログラムに参加したんです。その活動場所として、Students Labに通うようになりました。私の高校は勉強に厳しい進学校だったんですけど、偏差値ばかりで評価されるのがしんどくて。その環境から逃げるように、高3になってからもよく来ていました。
山田 みぞが高3のとき、QUESTION TALK(通称:Q TALK。QUESTIONが定期的に開催するトークイベント)のテーマが教育だったので、当事者として登壇してもらったんですよ。普段はわりと物静かなタイプだったから、「めっちゃ喋れるやん!」ってびっくりして。
溝川 もともと人と喋るのがあまり得意じゃなかったし、自分から意見を言うタイプではなくて。
平野 今の姿からは想像できない(笑)。
山田 大学生になってからはインターンとして関わってもらうようになって、イベントの企画や運営もしてくれて。どんどん成長して5年間で別人になったよね。
溝川 1年生のときはなかなか思うようにできなくて、「私はここのインターンに向いていないんだ」と泣きながら帰ったこともありました(笑)。でも挑戦する機会をいただいて、その都度フィードバックをもらううちに、前向きに取り組めるようになっていきました。
山田 今では、みぞの姿に憧れてインターンに入ってくれた子もいて、良いサイクルが生まれているのが一番喜ばしいことですね。当事者である学生たちが運営の核を担っているのは、Students Labらしさだと思います。
QUESTIONの入り口の役割を担う「ジェネコネ」
平野 溝川さんが中心となって運営している、学生と社会人の交流会「ジェネコネ」も毎回大人気ですよね。どんな経緯で始まったんですか?
溝川 もともとグローカルセンターが開催していた学生と社会人の交流会があって。コロナ禍を経て再開するときに、せっかくならQUESTIONという場を生かして、2~3階のコワーキングスペースの会員さんと5階の学生会員が交流できるイベントにしたいという構想でスタートしました。学生と社会人が肩書きを外してフラットに対話できるように、知識ではなく考え方について話せるテーマを設定するように意識しています。
平野 参加者はどうやってジェネコネを知ってくれるんでしょうか。
溝川 溝川 学生の参加者は毎回10~15人くらい。新規が6割以上で、口コミや紹介での参加が多いです。ジェネコネはQUESTIONを訪れるきっかけになってほしいという思いがあり、あえて会員限定にはしていません。誰でも気軽に参加できる、QUESTIONの入口的な役割も担っているんじゃないかなと思います。
平野 学生さんは、社会人と話したいというニーズで来てくれるんですか?
溝川 社会人だけでなく他大学の学生も含めて、自分の日常にはないコミュニケーションの機会を求めているのかなと思います。いつものコミュニティではない、新しい出会いが起こるのが面白いんです。
平野 QUESTIONらしさを感じますね。学生さんにもそういうニーズがあるんだなと再発見できました。
山田 アンケートでも「新しい出会いがあった」「違う価値観を知ることができた」といった声がすごく多いので、QUESTIONとしての良いインパクトの一つになっていると思います。
「自分ごと」として関わる人をもっと増やしたい
平野 普段からサードプレイス的に利用している学生が、ジェネコネなどのイベントにもっと参加してくれるようになると良いですよね。
山田 そうですね。サードプレイスとしての機能と、「新しい機会がほしい」「いつもと違う場に身を置いてみたい」というニーズに応えるイベント、両方があってのStudents Labだなと感じています。サードプレイスとして利用していた子たちが、ひょんなきっかけでイベントに来てくれることもあるので、これからも両方続けていきたいです。
平野 今通ってくれている学生たちに期待することはありますか?
山田 無料で使えるのは、場を提供する人たち、運営する人たちがいてこそだということはお互いに理解しつつ、一緒に心地よい場所を作っていけたらと思います。そのことが心のどこかにじんわりと残っていて、大人になったとき「自分も若者に何か還元したい」と思ってもらえたら。そんな循環ができると、QUESTIONとして意義がありますよね。
平野 溝川さんはいかがですか?
溝川 この場所をどうやって居心地よくしていくのか、一緒に考えられるメンバーが増えたらうれしいですね。インターンと利用者の中間のような、運営にも寄り添ってくれる学生が増えたら、もっと面白くなりそうだなと思います。
山田 学生はもちろん、QUESTIONに関わっている企業にとっても、もっとこの場所が自分ごとになっていくといいですね。榊󠄀田さんが当初からおっしゃっているように、学生は社会の未来だから、彼らに場を提供することは未来への投資につながるはず。そんな気持ちで関わってもらえたらと思います。
多様な人々が出会い、交わり、変化していく
平野 立ち上げから現在までを改めて振り返ってみて、いかがでしたか?
山田 印象的な出来事より、関わってくれた一人ひとりの顔が思い浮かびました。「ここに来て良かったです」「人生が変わりました」と言ってくれる子もいて、その一つひとつの蓄積だなと思います。
平野 溝川さんもこの場所で大きく変化した一人ですね。
溝川 はい。私自身も、何か一つの出来事で変わったわけではなくて、一つずつの出会いの積み重ねだったなと思います。分度器の根元で1度だけ角度が変わったら100m先では大きく変化しているような、即効性ではなく遅効性の変化なのかなと。「あの人が言っていたのはこういうことだったんだ」と後で気づくことがいっぱいあるんじゃないかと思っています。
山田 私たち大人が作れるのはきっかけだけで、道を切り拓いていくのは本人たち。でも何かをやりたいと思ったとき、サポートできる体制がQUESTIONにはあるので、うまく活用してもらえたらいいですね。
平野 我々京信のメンバーもそうですし、パートナー企業や会員の方たちなど、ネットワークがたくさんあるので、学生の皆さんもいろんな相談をしてくれたらうれしいですね。最後に、まだStudents Labに来たことがない人たちに向けて、2人からメッセージをいただけますか?
山田 「とりあえず来たら?」と伝えたいですね。まずはふらっと来て、話しかけてもらえたら。長期休暇中に遠方から来てくれる子もいるし、例えば海外留学前に数ヶ月空いた期間や、旅行中にここを拠点にしてもらってもいいので。いろんな使い方をしてもらえたら、もっと面白いミックスが起きていくんじゃないかなと思います。
溝川 「特にやりたいことがない人でも来ていいんだ」と思ってもらえるといいですね。私も別にやりたいことがあったわけじゃないし、何となく誘われてここに来て、何となくインターンをすることになって、それでもこうやって成長できるので。「やりたいことはないけど何となく楽しい」でOKなので、ぜひ気軽に来てみてください。

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