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はじまりは祖母から譲り受けた帯「ORIOBIプロジェクト」
目次
ORIOBIプロジェクト
今回のプロジェクトの主役は、「ORIOBI」代表の白幡 磨美さんです。
プロジェクトがスタートしたきっかけは、白幡さんがQUESTIONのコアパートナーであるツナグムのタナカ ユウヤさんの紹介でイベントに参加したことでした。
「着物の帯」の現状
かつては日本人の普段着だった「着物」ですが、着物を着る文化は衰退の一途をたどっています。それに伴って着物の「帯」も次第に使われなくなり、多くがたんすの奥に眠ったままとなっています。⽇本全国のたんすに眠っている帯は4億点と試算されています。現代においては、着物は普段着るものではなく記念日に着る特別な装いとなり、帯は「大切にしまっておくべきもの」という位置付けになってしまっているのが現状です。
祖母から譲り受けた帯からはじまった「ORIOBI」
ある日、白幡さんは祖母から古い着物の帯を譲り受けました。そこでハサミを入れてテーブルセンターなどの小物にしたところ、それを知った祖母が少し戸惑い、残念がる様子を見せました。
そのとき、白幡さんは大事なことに気がつきました。家庭に眠る帯は、祖母から母へ、母から娘へと受け継がれていたり、成人式のために購入したり、大切な方からの贈り物であったり、その一つひとつに歴史や背景を持っているのだ、と。
そこで白幡さんは、帯に込められた持ち主や職人の想いを汲んで帯にハサミを入れず、一本そのままを作品にして現代に繋げたいと考え、帯を装飾品として活用するという新たな提案をする「ORIOBI」を立ち上げました。また、若い世代にも帯に興味を持ってもらいたいと、作品をベースにしたミニチュアアクセサリーの展開も始めました。
「ORIOBI」とは、帯にハサミを入れることなくそのまま一本を使い、「帯×折り紙」という日本の文化を組み合わせた装飾品です。帯を切らずに創作しているため、作品を解いて元の1本の帯に戻し、他の作品に創り変えることも、再び着物帯として利用することも可能です。そして、ORIOBIミニチュアアクセサリーは作品のデザインを元に約1/10のミニサイズの帯を作り、そこから作品とほぼ同じように成形しています。既存の帯を切って作ったものではなく、はぎれや金襴裂地などから作成されたアクセサリーです。
プロジェクトのスタート
白幡さんのORIOBIにかける想いがこもったプロダクトをもっと広めたいという熱意をお聞きした私たちは「ORIOBIを通して帯を身近に感じ、幅広い層に興味・関心を持ってもらうこと」をゴールに掲げ、白幡さんと一緒に今回のプロジェクトをスタートしました。
幅広い世代に興味を持ってもらいたいというプロジェクトである以上、若い世代の意見が不可欠と考え、QUESTIONと関わりの深い京都芸術大学の学生3名をプロジェクトメンバーに迎えました。
学生の皆さんは、ORIOBIの魅力を引き立たせるラッピングやタグの提案をしてくれたり、実際に紙でモックアップを作ってくれたりと、持ち前の感性を活かしたアイデアをたくさん出してくれました。
帯の製造現場を見たことがない!
ディスカッションを繰り返す中で「ハンドメイドのため、生産ロットが限定的」などいくつかの課題が挙がりましたが、プロジェクトメンバーは「肝心の帯の製造現場を見たことがない」ことに気づきました。
そこで私たちは帯の製造現場を見せてもらえる先を探すため、京都信用金庫 西陣支店に連絡しました。これをきっかけに織物に関して相談や協業ができそうな企業と白幡さんとの間につながりを作りたいという意図もありました。
西陣は、「西陣織」の名が示す通り、かつて京都における繊維産業の一大拠点でした。機械化の進展により規模は縮小したものの、現在も伝統的な織物企業が数多く存在しています。
西陣支店からの依頼を受けて快く引き受けてくださったのは、同支店取引先の有限会社フクオカ機業様でした。
私たちプロジェクトメンバーはさっそく白幡さんと一緒にフクオカ機業様を訪問し、帯の製造工程を見学しました。
実際に現場に足を運び、帯づくりの緻密さ、見事な職人技、帯にかける職人さんの想いを知ったことで、私たちはORIOBIによって社会に伝えたいストーリーを深く考え直すヒントを得ました。
伝統織物となかなか接点を持つ機会がない若い学生メンバーにとっても、職人さんと接する貴重な機会となりました。
そして嬉しいことに、フクオカ機業様が白幡さんの「帯にハサミを入れない」という想いとそのプロダクトに共感され、「自分たちも一緒に何かできないか?」と、ORIOBIとの繋がりを生むことができました。
後日、フクオカ機業様から、モデルルームの装飾として同社の帯を豪華に2本使用して仕立てた作品をオーダーいただきました。
京信 西陣支店にてORIOBIを展示
現場で得た知識や感動をもとに、プロジェクトメンバーは着々とORIOBIのブランディングを練り上げていきました。
まず地元の反応を見るため、当金庫 西陣支店のロビーにて、ORIOBIの作品を展示しました。
来店したお客様の反応も上々で、近隣の織物職人さんからアドバイスをいただくことができ、作品の展示を通じて新たな出会いが生まれました。
ORIOBIアクセサリーの販売を開始!
知名度向上と販路拡大のため、小売店への納品にトライすることにしました。
京信のプロジェクトメンバーが中小企業支援の経験を活かして、仕入れで欠かせない掛け率や相場、利益率などの設定をサポートしました。その結果、いくつかの納品先が決まり、売れ行きも好調!新製品の要望もあり、学生さんとの新しいプロダクト展開も前向きに検討中です。
コアパートナーが関わるイベントに登壇
タナカユウヤさんから、「『つぎの西陣をつくる交流会 ~つぎにし』~に参加してみませんか?」とのお誘いがありました。
このイベントは西陣地域の活性化を目指す京都市の取り組みで、西陣で展開したい具体的なアイデアについてプレゼンを行い、参加者と一緒になってアイデア出しや意見交換をするというものです。
白幡さんはこのイベントにプレゼンターとして登壇し、帯とゆかりの深い西陣のコミュニティでORIOBIのストーリーや想いを発信しました。
白幡さんの取組に興味を持ってくれる人が増え、このイベントがきっかけのご縁も広がっているとか。
伝統の京町家で個展を開催
2021年2月、京町家を舞台に初めての個展を開催しました。帯がよく合うこの会場には、連日数多くの方が足を運んでくださり、プロジェクトメンバーを介して京都信用金庫の取引先を4件もお引き合わせできました。
そのほか、織物デザイナーの方や西陣織に関する起業を考えている学生など、白幡さんにとって今後の事業に繋がるような素敵な出会いもありました。
ダイレクトメールは、プロジェクトメンバーの学生と共同で作成しました。
新たな問題が浮上! 「製造が間に合わない」
順調にORIOBIミニチュアアクセサリーの販売が進むにつれて、当初から懸念していた「ハンドメイドのため生産が追いつかない」ことが、ここにきて切実な課題となりました。
就労支援プロジェクトを実行中のQUESTION会員に相談したところ、アクセサリー製造工程の一部を就労支援施設にアウトソーシングするアイデアを提案していただきました。そのつてで、プロジェクトメンバーとも面識があり就労支援施設を運営されている方を白幡さんにご紹介しました。
プロジェクトチームは、学生メンバーを中心にパッケージを含めた新商品の開発をスタート。お披露目を兼ねてプロジェクト成果発表会とQUESTION1階の「チャレンジスペース」での販売を目指すことにしました。
展示会&ワークショップ in KéFu stay & lounge
京都・西陣にあるカフェ&ラウンジ「KéFu」にてORIOBIの展示会&ワークショップを開催。プロジェクトメンバーで見学した後、KéFuにてミーティングを行い、学生メンバーを中心に開発中のパッケージや新商品について話し合いました。
QUESTION館内にて作品を展示
ORIOBIの作品にはそれぞれ想いが込められています。そこで河原町支店やQUESTION各フロアのエレベーター前ホールに作品を展示しました。
ORIOBIプロジェクト
ついにパッケージと新商品が完成。そこで2021年9月4日(土)、QUESTION1階のチャレンジスペースにて展示販売、4階Community Stepsにてプロジェクト報告会、7階ではワークショップと、QUESTIONを1日ジャックするORIOBI Dayを開催しました。
ハルカス学園祭
2021年11月、学生さんが中心となって天王寺のあべのハルカスにて開催された「ハルカス学園祭」に出店しました。
今後のORIOBIの展開
ORIOBI作品をよりたくさんの方々に知っていただくために、各地での展示会、メディア露出、ワークショップなどを積極的に行い、これからも帯を服飾品としてだけでなく装飾品として楽しむという新しい提案をしていきます。
ORIOBI WEBサイト: https://www.oriobi.jp/
このプロジェクトにかかわったパートナー
株式会社 レプス 牧野 唯仁
このプロジェクトにかかわったコミュニティマネージャー
津田 郁太