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QUESTIONに関わる企業や個人にスポットを当ててご紹介する連載「Qパートナー紹介」。
“問いの交差点”QUESTIONに相談したい「問い」や、ここに集う人々と一緒に考えていきたい「問い」について紹介します。
第16回は、株式会社 ROOTS 中山 慶さん、曽 緋蘭(Feilang Tseng)さんです。
中山 慶さん
英語同時通訳者として世界一周のクルーズ船にて勤務。その後、旅行会社が発行する雑誌『風の旅人』で編集者として働く。2013年、学生時代住んでいた東京から京都市の京北に移住。外国人向けのコミュティ・ツーリズム「Discover Another Kyoto」サービスを立ち上げ、地域や里山の魅力について、その深さを失わずに伝えるツアーや教育プログラムを、今は森の京都広域エリアや奈良・曽爾村などにも広め、国内外の里山と連携を深めている。
曽 緋蘭(Feilang Tseng)さん
サンフランシスコにて社会課題解決型のインダストリアルデザインを学び、卒業後インテリアデザイン会社でブランディングを手掛ける。2005年に帰国。11年間京都のオムロンヘルスケアにて数々のヘルスケア商品を手掛け、2016年より独立。京都市京北の茅葺古民家に住み、地域の魅力を引き出すコミュニティデザインを行う。現在は株式会社ROOTSとして、世界中の学生(香港理工大学、スタンフォード大学、北京大学附属高校など)や、ヨーロッパの建築の専門家を里山へ招き日本の伝統家屋を学ぶツアーなど、サステナブルスタディツアーを企画運営。#里山 #世界一周 #5ヶ国語 #通訳 #Good Design #鶏 #自然 #茅葺 #地域起こし #ライフワーク #移住
都市と田舎の連携・循環
ーーお二人の問いは何ですか?
フェイラン:今後、都市の機能がどうなっていくのかは問いとしてありますね。特にコロナ禍で明快になった気がしていて、いわゆる資本主義経済を求めた一番合理的な形が都市の形としてあると思うんですが、京都はお寺、地蔵盆、工芸の文脈など資本主義経済では無いところの価値を維持しているレイヤーがありますよね。昔は、桂川上流から千本丸太町まで京北から丸太が千本運ばれていて、寺社仏閣や古い家はその京北の木で作られていたんです。都市は素材という部分で京北と繋がり、人も都市へ流れていました。昔の人たちの感覚は暮らしの延長線状に里山や川があって、川の上の人、下の人が繋がっていたんですね。
ーー京都の千本丸太町の由来ですよね。京都の市場は地域を超えて繋がっていたんですね。
フェイラン:そうなんです。しかし京都はマーケットになり、マーケットがグローバル経済と繋がり、今は木材も京北からほとんど行かなくなっています。そこでROOTSの活動によって、また神経を1本ずつ繋げていく作業をして、一緒にできるパートナー企業を探しています。京都はおもしろい動きができる都会になれる可能性が高く、お金だけで終わりきらない関係性を作れると思っているので、京信さんとROOTSのような関係を続けていきたいです。
Cross the border connect with roots
ーー問いでもある、10年後20年後の未来はどうなっていると思いますか?
フェイラン:20年後になるともうわからないですよね。京北という、かつて京北町だった場所は、今はすごく深刻な事態なんです。4500人ぐらいの人口の6〜7割が60歳以上で、いなくなっていく人数と同じだけの人数が来るのは難しい中でどうやってサバイブするかという課題があります。10年後はその地域が地域として存続しているというところを最低ラインとして目指しています。
中山:ROOTSのスローガンである「cross the border connect with roots」、つまり境界を超えていく、そして根っこ、根源・本質で繋がるということを京北でやっているので、日本の地方と世界の地方で同じ想いをもった人たちと繋がっていくことが大切だと思っています。教育や大人向けでもいいし、移住者、働くといった濃い関係のものからツーリストという薄い関係もあり、その間のグラデーションを豊かにしていきたいと思っています。それは20年かからず2、3年後の未来ですね。
また、京北は起業をしている人、新たな産業が生まれていくという点でまだまだポテンシャルがあると思っています。外からの人間が起こす会社、地元の人と合同でつくる会社が出てきて、雇用・産業含めて新しいものも生まれてきています。上手くいくと10年後には、新しい生き方の選択肢に当たり前に京北とか美山とか田舎もあるという未来が出来るだろうと思っています。
ーー「問い」を解決するために、今なさっていることはありますか?
フェイラン:京北で毎年行っているアート・音楽・食のイベント「ツクル森」のプロデュースや企業・学生向けのスタディツアーなど、地域外の人たちを広く呼び込む活動をしています。幸い、「ツクル森」の参加者のうち毎年1組は影響を受けて移住してくれていて、どうやってこっちに矢印を向けて行くかを意識しています。その中に民泊施設、リモートワークの拠点など、まずは都市と田舎の連携・循環を作っています。移住までいかなかったとしても「ちょっとした川掃除の手伝いに来るよ」みたいに、地域のお仕事とか、京北が存続するために必要な仕事とかが、いろんな手を借りてなんとか回る状態を事業として作りたいと思っています。
中山:ROOTSとしては、最近は「リスポンシブルマーケット」について話をしていて、京北でいろんな取組を行ったり、シンボリックなことをしています。例えば、ログインプロジェクトで京北の木を使って椅子やツリーハウスを作ってみたりとか。でも、もともとちょっと意識が高い人とか、田舎が元々好きって人が、いいよねいいよねってどんどんディープになっていくっていうのは個人的にはcross the borderだと思っていません。京都にいる150万人の人たちが、「それおもしろそうやし家族で行こうかな」とか、「お土産にあの椅子持って帰りたい」とか思ってもらいたいし、結果的に楽しく、京北の森との関りやSDGsを気づいたら実践している、みたいな関係性を作っていきたいです。
ーーQUESTIONに期待していることはありますか?
フェイラン:めっちゃ仲良くなりたいよね(笑)QUESTIONの問いを立てていくコンセプトは相乗効果があってすごく面白いと思います。冒頭でも話したように、京都特有のレイヤーとこれからの信用、都市の信用、地域の信用みたいなものをQUESTIONがどうまとめて、どう可視化し、イメージ化していくのか非常に興味があります。そこは問い続けていかないと、編集し続けられない部分なので、通っていくことで片鱗が見えてくると思うんですね。多分その部分に未来への兆しがあるのではとか、なんとなくこっちではないよねってのが見えてきていると思います。都市型経済で大型化していって、全て百貨店みたいになっていくのは違うし、一つ一つの商い、商店街の復活など、1個1個の玉がビビットになっていくのがすごい大事で、そのビビットな部分との接点としてQUESTIONがあるのだと思っています。
中山:起業を後押し、然るべきタイミングで人を繋げてくれる、同時にこんなことをしていて京信さんは回っていくのか疑問に思っています(笑)確かに京信さんみたいな動きをすると事業は生まれていくだろうなと感じています。地域にいると自分の目の前の仕事に集中していて、俯瞰的な目で繋げてくれる人が意外といなかったりするので、繋がる人が集まるQUESTIONという場があって、すごく可能性を感じています。ROOTSにとっては、リスポンシブルマーケットって本当におもしろい花を開かせていく場所で、QUESTIONはとても重要な土のような存在になっています。その企画などを発表する場をQUESTIONやパートナーさんたちに共有させてもらい、僕らだけではリーチできなかった層の人たちと繋げてもらいたいし、積極的に働きかけていきたいと思います。
(取材:天川、記事:木原)
<パートナー概要>
組織名:株式会社 ROOTS
Webサイト:https://rootsjourney.jp/