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QUESTIONに関わる企業や個人にスポットを当ててご紹介する連載「Qパートナー紹介」。
“問いの交差点”QUESTIONに相談したい「問い」やQUESTIONに集う人々と一緒に考えていきたい「問い」について紹介します。
第4回は、二傳株式会社の山田晃弘さんです。
山田 晃弘さん
二傳株式会社 専務取締役
また最近は、同業からの要請を受けてコロナ禍でも対応できる食品のテイクアウト販売に関するアドバイス(食品表示、安全性、冷めても美味しい料理作り、取引先紹介など)を行う一方で、自身も地域視点、地球環境視点に立った新たな切り口からテイクアウト食品を作ろうと動いている。
#京料理 二傳 #食べる仕事 #地域密着 #行動力 #料理同好会 #人に寄り添う #食品工学 #息子が3人 #でも気分は長男 #銭湯とビールが大好き #元気な京都にしたい
食を通して場面をつくること
ーー山田さんが考える「京料理 二傳」について教えてください。
1757年の創業時は、魚屋をやっていたんです。100年経つ頃には、仕出しをするようになり、もう100年経つ頃にはお座敷を構えるようになりました。「地域に必要としてもらえるように」という想いを持って続けていく中で、時代の流れに合わせて変化して、現在は料理屋をしています。 箱だけあっても箱は何も生みません。そこに集まる人がいて、僕たちの商売は始まるものです。結婚前の顔合わせとか法事とか、そういった様々な場面でどのように人に寄りそうのか、というのが大切な仕事なのかなと思っています。京料理は美しい印象が強いですが、奥深い”想い”もあるんです。
ーー京料理といえば「美しさ」を思い浮かべますが、もっと深いものがあるんですね。
見た目の美しい料理を追求する料理人もおられる一方、僕たちみたいに場面に寄り添うことを大切にしている料理人もいます。お客さまの利用シーンやその時の心情に合わせてお選びいただくのが良いのかなと思っています 。なので、僕たちも持ち味を失わないように努力する必要があるかなと。
決してお客さまに押し付けない
ーー料理を通して「ひとつひとつ寄り添うこと」が大切なんですね。
そうですね。料理を食べて「おいしかった」という記憶はすぐになくなってしまうんですよ、上書きされていくんです。でも、その時一緒に料理を食べた人や、そこで喋っていたこととかはずっと残っていくんです。なので、主役を張れる料理を作りたい時っていうのもあるんですけど、決して押し付けないで相手に合わせることが大切だと思うんです。そうすると、上質なものになっていくのかなと考えています。
自分の行動が日本や世界、ひいては地球を作っている
ーー料理人として様々なチャレンジをされていますが、今、山田さんはどのような問いを持っていますか?
コロナ禍で飲食店や宿泊業は大変な状況ですが、安全のために営業自粛した方がいいのか、それとも店や雇用を守るために営業を続けた方がいいのか、どっちが正しいのだろうと考えています。
先行きもわからないのに判断しないといけないことが続いた中で、ずっとこの問いはありましたね。
ーーコロナ前後で考えは変わりましたか?
変わりました。コロナ前にいくつか計画していたことがあったけど、今思うと子供の遊びみたいなものを想像してたなと思いますね。
その時はそれで良かったと思うんだけどね。今は、「死ぬ」ことが目の前にあるわけで。
世の中で平等な物って何かなって思うと「時間」なんですよ。1日24時間しかないということ。それと、死ぬこと。これだけしかないんだなというのが分かって、研ぎ澄ましてみると、本当に価値のあることしか残らないんです。
それ以外は、削ぎ落とされていくわけです。そう思うと、コロナ前は余分なことをしていたなと。
現在は、変化する兆しを感じたり、動くことが大事なのかなと思っています。
ーー「動くこと」大切ですよね。
「動き続ける」「変化する」こと、仕事ってリスクを持って変化していく必要があるのかなと思っています。コロナ禍では店を閉じるか従業員を減らすかっていう判断をすると思うんです。けれども、その逆だと思って、うちではこの4月に人を採用しました。
ーーすごい決断力ですね。
もちろん、あかんこととか失敗とかあるけど、動き続ける中で取捨選択していけばいいし、あかんかったらやめたらいいし、そういう状況になってるなと思っています。数字だけ見ていても嫌というかね。
僕は今、「目標を掲げて、行動を変化させることが、全体最適を生む」という考えに心を惹かれています。ジェンダーバランスやヴィーガンもそうですけど、やりたいことをやった方がいいし、こうありたいとかこうあるべきだとか想いを持って、自分たちも行動していくべきなんじゃないかなと思うんです。目の前の損得とか経済性のところだけで何かを得る人になるのは嫌ですね。こういう自分の行動が日本や世界、ひいては地球を作っているから。
ーー最後に、QUESTIONに期待していることを教えてください。
8階(DAIDOKORO)にあるキッチンをもっと使いたいですね。あの場所を地域の人に広めたいです。様々な業種の人が参加する料理同好会みたいなイベントを定期的に開催して、特定の日に自由に集まって一緒に料理を作りたいです。そうすると、コミュニティが広がるだけではなく、地域の人にどんな料理が好まれているのか変化を知ることができて、新たな料理が生まれるきっかけにもなると思います。
僕たちの生活の中で、「食べる」というのはなくならないんです。両親から言われたのは、「食べる仕事」っていうのは、その時々流行り廃りはあるけれども基本的にはなくならないということ。 中身が違うものを売っていかないと、この業界に残れないのかなと思っています。
(取材・文:池内 琴子)
<パートナー概要>
組織名:二傳 株式会社
ウェブサイト:http://www.niden.jp/