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5周年記念トーク QUESTIONの“今”と“これから”

2025/12/02

テーマ:「現在(過去を少し含めて)~未来」

コミュニティ・バンク京信 理事長 榊田、QUESTION館長 平野の他、コアパートナーのツナグム、グローカル人材開発センターの面々が、それぞれの視点から5年を振り返っての率直な感想や、5年前に思い描いていたQUESTIONの未来と今との距離、そして25年後に描く社会の姿などを語り合いました。これまでの歩みを確かめながら、これからの一歩を考える特別な対話の時間となりました。

モデレーター: 平野 哲広(コミュニティ・バンク京信 QUESTION 館長)
森下 容子(コミュニティ・バンク京信 ゆたかなコミュニケーション室 室長
/初代QUESTION館長)

登壇者:    榊田 隆之(コミュニティ・バンク京信 理事長)
田村 篤史 氏(株式会社 ツナグム / 株式会社 Q’s 代表取締役)
山田 埜 氏(NPO法人 グローカル人材開発センター チーフコーディネーター)

QUESTION開館に関わった人たちの今の想い

平野:
まず初代館長の森下さんにお伺いします。この5年を迎えた感想を教えてください。

森下:
こうやって皆さんと一緒にQUESTIONの5周年をお祝いできることを本当に嬉しく思っています。5年前には想像していなかった風景だなと思うと感慨深いですね。

2019年4月、QUESTIONというビルの名前がまだ決まっていない頃に、榊田さんに呼ばれ、「河原町ビル準備室室長に任命する」と伝えられたことが始まりでした。
コミュニティ・バンク京信が、地域にどういったことを還元できるか、価値を創造できるかを一から考え直そうということの他は、本当に何も決まっていない状態でした。今までやったことのない施設の立ち上げに関して、どういう空間を作るか、どんなコミュニティを作っていったらいいのかを、パートナーの方々と考えていたら、一年半が経過していました。
2020年11月、コロナ禍真っただ中にQUESTIONがオープンしました。

平野:
そういう時期があっての今ですね。これだけたくさんの方が来られているというのは非常にありがたいですね。

クリエイティブ都市化とイノベーションを生む「共創(Co-creation)」

平野:
では、榊田さんにお話を聞いていきたいと思います。QUESTION設立5周年の感想をお聞かせください。

榊田:
QUESTIONの顔の一つでもある今回の会場、Community Steps。この空間で皆さんと一緒に今日を過ごせるっていうのが最高の幸せですし、作ってよかったなと改めて思っています。
5年前は、ここにネットワークのハブとなる拠点を作ることで、京都がクリエイティブな都市になればいいな、という思いがありました。
また、人々のつながりによってイノベーションが起こっていく、いわゆるCo-creation(共創)やCollaboration(協働)といった言葉で始まる、「共に作る」という活動が重要であると考えていました。共感で繋がる関係性をもとに、イノベーションが起こりやすい状況をどうやって作っていくのかということが、とても大きな問いでした。
当時は、まだ答えは出ておらず、この問いがある中で、施設をオープンすることへのプレッシャーも強かったと思いますが、実現していきたいという思いが根底にあったんじゃないかなと今振り返っています。 21世紀の世界観というのは、誰かが何かを仕組むとか仕掛けるとかじゃなくて、自然発生的にいわゆるインパクトベースで心が動くことに対して、人が行動し、つながって新しいことを起こしていく。そういう偶発性の連続に価値があるんじゃないかなと思っています。

QUESTIONの場合は特に、人と人とのネットワークですよね。我々が作りたかった世界観は、場所を作るのではなくて、どこか心でつながりあっているというネットワークです。5年前より今の方がより明確に胸を張って言えるんじゃないかと思っています。

平野:
榊田さんが思い抱いている2050年のQUESTIONを教えていただけますか?

榊田:
今申し上げたようなことが、これから多くの人々が大切にしていく社会になれば、本当の意味でのソーシャルグッドな社会づくりが始まり、当然進化していくはずです。その進化は、いわゆるインクルーシブな世界、すなわち人と人とがお互いを思いやれるような世界観に変わっていくと良いなと思います。

ほとんどの仕事がAIに取って代わられるといったことが言われています。では、何が残るのか?それはやはり、人と人との関係性です。みんなで作っていくコミュニティというのは、理不尽なものも含めて、ヒューマンな心でお互いがつながるようなことだけが残るぐらいになるのではないでしょうか。

2050年というのは、まさしくこのようなコミュニティや共感を通じてコミュニケーションを取っていく時代です。そうした中で、お互いが思いやるようなインクルージョン(包摂性)が本当に必要であり、そういったものがどんどん成熟していくと、本当の意味でのソーシャルグッドな社会ができるのではないか、というのが私の勝手な思いです。

本当にソーシャルグッドな社会になれば、それは地球に優しく、人にも優しい社会です。単に言葉で言っているだけでなく、お互いがそれをバリュー(価値)として認め、そういった価値観が広がっている国になると良いなと思っています。

平野:
それは普段のお話の中からでもひしひしと感じますので、我々も地球にも人にも優しい社会を作っていくことに力を入れていきたいなと思いました。

現代社会に「余白」を提供することの必要性

平野:
では続いて、QUESTION立ち上げ期から共創パートナーとしてご参加いただいている、株式会社ツナグムの田村さんにお話を伺っていきたいと思います。

森下:
コミュニティ・バンク京信がQUESTIONを作ることになった時、詳細はまだ何も決まっていませんでした。その時になぜこのQUESTIONのパートナーになろうと思ってくださったのかということと、QUESTIONとの関わりを具体的にお話いただけますか?

田村:
コミュニティ・バンク京信さんとのお付き合いのきっかけは、前理事長の増田寿幸さんでした。

2014年に「京都移住計画」という本を出版していたのですが、増田さんがその本を手に取ってくださったんです。そして、直接メールが来て「あなたのやっていることに興味があるから話を聞かせてくれ」ということで、呼んでいただき、取り組みについてお話しさせていただきました。
そこで話した内容に対して、「それは本来、京信がやらなければならないことだと思っている」というお言葉をいただきました。

京信はお金を貸す場所なのにどういうことだろう?と思ったのですが、京都という街に対する時間軸の捉え方からくるものだと気づきました。京都は、外から人が入ってきて、中の人とつながり、新しいことを生み出し、それが脈々と続いている。だからこそ、外の人が何かしたいということに対して応援するのは、京都が長く続いていくために必要なことだ、というお話があったのです。

そのように、京都を長らく見ておられた経験をもとに、事業を評価していただけたことは、すごくありがたかったですね。

QUESTIONが普通の支店ではないとすれば、京都の中と外をつなぐような側面もきっと出てくるだろうと。その時に、何かお役に立てることができたら、という思いがありました。ですから、お声掛けしていただいて、本当に嬉しかったです。

森下:
5周年を迎えた今の率直な気持ちをお聞かせください。

田村:
めちゃくちゃ嬉しいですし、本当にたくさんの方に「おめでとうございます」と言っていただきました。その方々に具体的に何をして差し上げられたかな、と思うとあまりパッと思い浮かばないのですが、恐らくここで様々なつながりが勝手に起きているのだろうと思っています。

この場所や、ここで一緒に活動するコミュニティマネージャーの方々に変化が起き、その積み重ねが、こうやってたくさんの方が集ってくださっていることにつながっているんだな、と実感しています。

森下:
オープン当初思い描いていた姿に、現在近づいているのかどうかという点についてはどうですか?

田村:
一つ出来てないなと思うことが「余白」ですね。
今の社会が割と窮屈で、いろいろ詰め込まれた中で何かを考えなきゃいけない。このビルが何か必要なものを届けるとしたら何?っていうと、それが「余白」だと思っています。
ですが、僕自身は今、割とパツパツな状態なんで余白なんてない状態です。

一方で、5周年イベントで各コミュマネが提供してくれてるコンテンツは余白であると言えますね。直接ビジネスにつながることじゃないようなコンテンツが割と多かったと思っています。普段考えないことを考えられるこの時間って余白とも言える。それをコミュマネの皆さんが作ってくれているのは良かったなと。

若者への投資としての「共創」

森下:
QUESTIONパートナーのグローカル人材開発センターの山田埜さんにお話をお伺いします。

山田:
学生との関わりがとても深い団体として、QUESTION立ち上げ時に、「ぜひ一緒に共創してもらえないか」とお声がけをいただきました。若者が未来の社会を作っていく人たちだから、そこに対する投資を地域金融機関としてやらなきゃいけないという熱い思いをいただいて、ご一緒させていただくことになりました。

平野:
声がかかった時、どんなお気持ちでしたか?

山田:
何も分かってなかったですよね。QUESTIONオープン直前くらいの頃、私はアイスランドで違う人生を生きるんだと考えていたんですが、この時初めて迷って……。 これだけ大きな責任をいただいて、価値のあるお仕事ができるという時に本当にアイスランドに行くのか、それとも京都に残るのかと結構悩んだんですが、最終的にここに残ることを決めました。その時の選択によって今の私があるので、そういう意味では、QUESTIONを通じて人生が変わったなと思っています。

平野:
スタートした頃、5年後や、QUESTIONをこんな風にしていきたいかなどを思い描いていたと思いますが、今その未来に近づいてますか?

山田:
近づいてもいないですし、多分遠くなってもいないと思っています。今の感覚としてはやっとスタート地点に立てたなと感じています。5年経って初めて「共創」の「き」くらいがなんとなくわかってきたかなというところです。
その中で、この5年で作れたインパクトがあるとすれば、「QUESTIONという場所が自分の人生を変えてくれました」と話してくれる若者が何人かいることです。そういうふうに言ってもらえているということが、QUESTIONの価値だなと思ってます。

平野:
それは嬉しいですよね。
QUESTIONオープン当初は5年後の未来はクリアに見えてなかったということでしたが、ここから2050年のQUESTIONの未来をどのように思い描いていますか?

山田:
QUESTIONというよりは社会自体が端的にもっといい場所になってたらいいなとは思っています。若者が希望を持って生きられるような社会になっていてほしいなというのがまず第一にあります。
いい社会にしていくための活動の一つとしてQUESTIONがあるのかなと思いつつ、もしかしたらQUESTIONという名前は変わってるかもしれないし、またこの建物も変わっているかもしれないし。
でも、人が集まって、自分の手の届く範囲でつながりながら、いい社会を一緒に作っていこうというムーブメントを起こしていること自体が脈々と続いていて、それがいろんな地域で起こっているという景色が見られるといいな思っています。

~クロストーク~
QUESTIONの価値と将来への展望

平野:
それぞれの2050年のQUESTIONの未来という話をいただきましたが、みなさんどのように感じられましたか。

榊田:
人々が安心して心を開いて、自らの事や苦しみがQUESTIONに来たら癒される、救われる。そういう居場所になれるといいなということが、我々の漠然とした思いですね。

田村:
そうですね。この5年の積み重ねの中、QUESTIONが居場所になっていると僕も感じています。5階Students Labは学生の集う場ということでしたので、当時もっと大学生にフォーカスを当てていたんですけど、今は高校生がカジュアルに使えるようになっているみたいですね。

山田:
高校生がよく来てくれるんですよ。話を聞くと、今、市立図書館も勉強しにくい場所になっていると。パソコンを持ち込んだり、長時間利用することができなくなっているようです。さすがに高校生が毎日カフェには行けないということで、溜まり場として使ってくれています。Students Labは間違いなく学生の居場所になっているなと感じています。

田村:
その積み重ねを経て、次は高校の先生たちが集まり始めていますよね。

山田:
先生たちについては、QUESTIONからお声がけして、「QUESTIONをプラットフォームに、地域の先生たちや教育に関わる方が、どうやって地域の教育をアップデートしていくかを話せるような場を作りましょう」と、一緒にコミュニティ作りに取り組んでいます。
学生さんだけではなく、教える立場にいる人たちにとっても、今まで知り合ったことのない人たちと一緒に教育について話せたり、ちょっと愚痴が言えたりできる場になってきているのは、居場所としての新しいファンクションかなと思っています。

田村:
面白い先生が集まっていますよね。たまに覗くと、京都市の教育委員会の方も来ていらっしゃる。

山田:
自分のことを「はみ出し者」とおっしゃっているような先生たちが集まっている場ですね。

田村:
QUESTIONは「街の職員室でもある」というワードも出てきました。そこに、企業さんも加わってきている流れも面白いなと。

山田:
先生たちとお話をする中で、学生の出口である社会側・企業側が求めている人ってどういう人なんだろうと考えることがあって。学校でどういう人たちが育つと、地域の会社の社長さんたちは一緒に働きたいんだろうか?という観点で、ご意見を頂戴して、そこから考えられる「学校で学ぶべきことはなに?」というテーマで対話してもらったこともありました。

QUESTIONがいろんな分野の人たちにとって、居心地のいい場所になってるんだなという実感が、この5年間の中でちょっとずつ湧いてきています。

平野:
そのあたりは榊田さんも感じておられるのではないかと。開館当初はもっと課題が解決されるような場所になるかと思っていたけど、実際はみんなが集まる緩やかなネットワークのような場所になっている。それはそれでQUESTIONらしいということを以前おっしゃっていたと思うんですが、いかがですか。

榊田:
いいことだと思いますね。ただ、世の中の潮流を変えるのは時間がかかる。たかだか5年ぐらいで何かが変わったというのはとんでもない話で、一つの事を変えるのには、最低でも10年、場合によっては20年かかると思っています。その中で、QUESTIONに来たら、少し中長期的な時間軸でものごとを考えられる。ここに来たらそういうことを話してもいいみたいな雰囲気がありますよね。

今日の生活も大事だけど、50年後の未来も大事。
しかし、50年後の事ばかり考えてるわけにもいかない。でも今日のことだけ考えていたら、50年後の未来がどうなってもいいのか?。これが今人類に突きつけられているテーマだと思っています。我々は少なくともQUESTIONが間を置いて考えられる空間になってほしいなと思います。

田村:
間を置いて考えられる空間というのはめちゃくちゃいいですね。余白の話とも通じるなと思っています。QUESTIONでのイベントは、直接的なビジネスの課題解決ではなく、すぐには役に立たなさそうだけれども、いずれ大事になりそうな何かをテーマにおけるといいなって思います。
以前開催していた、QUESTION TALKがまさにそうでした。

山田:
抽象的なテーマは結構扱いにくいですし、難しいんですけど、QUESTIONだからこそのトピックなんじゃないかなということで、QUESTION TALKを開催していました。
とはいえ、その地域の事業者の中では、近々の課題を解決したいという思いももちろんありますし、そこに対して向き合うのも、QUESTIONの役割の一つだとは思っています。そこのバランスの取り方はまだまだ難しいなと感じています。

榊田:
皆さんもそうだと思うけども、このビルってだいたいよく分からないんですよね。よく分からないけど、分かっている人はすごく分かっている。そういう人が増えてきている。5年後10年後には、QUESTIONが目指してることが多くの人に理解され、そこにいるコミュニティマネージャーやバーテンダーに会いに、あえてお茶を飲みに行くんだという空間を目指すべきです。

そして、10年目のQUESTIONでのこのトークセッションは、今よりも多くのエピソードやストーリーに溢れていて、利用者が登壇者になって語り合うような10周年にしたいなと思いますね。

山田:
コミュニティマネージャーって泥臭い仕事じゃないですか。
時間もかかりますし、分かりやすい指標で「こういうことが起こりました」って示せないわけですよね。本当に細かいことの積み重ね。そこから何が生まれるか分からない。見えてこないものがたくさんあるいう中で、時間がかかるものに対して、社会の評価軸が変わっていくのは必要不可欠だなと思いますし、そのきっかけとなるような場所として、QUESTIONはあるんじゃないかなと思っています。

森下:
2階はコワーキングスペースになっているんですけど、利用者の方とコミュニケーションを常に取っておくことで、何かあった時に相談いただけたりしますね。
お金のご相談はあんまり受けなくて、漠然としたご相談を受けることが多いです。そういう相談をされるということは私たちが信頼されているんだなと思うこともあります。

田村:
以前、森下さんに「QUESTIONを立ち上げる前の私とその後の私」についてお話いただいたことがあります。
QUESTIONへ来る前は、お客様から相談があった時に「どうしよう」と思っていたけど、QUESTIONに来てからは、同じ相談をされても、「返せる誰かがいる、共感してくれる誰かがいるだろうと思い浮かべられるようになりました」とおっしゃっていました。京信の他の職員も、そういうマインドセットと動き方をもっと早めていけるとインパクトを出しやすくなるでしょうね。

山田:
榊田さんに聞いてもいいですか?
こんな8階まであるビルで別にお金儲けをしているわけでもないところで、それでもやり続けることの意味ってズバリどこにあるんですか?

榊田:
今日の儲けだけ出せばいいんですか?っていう話ですね。今日の儲けのためにここの空間をもっと別の用途で使う。そういうQUESTIONでいいんですか?って言われたら、我々は魂を売ってまで今日何とか成果をあげようというのは順番が違うんじゃないかと思っている。

やっぱり大事なのは、人と人との関係を整えること。クリエイティブでイノベーションを起こすということを達成するためには、コミュニティを作りながら中期的に考えていかないといけないということ。今日のことばかりを考えているような金融機関に成り下がってはいけないという思いも強くある。そのひとつのシンボルがQUESTIONであって、そういうものを大事に地域の皆様と一緒に作っていく。それがコミュニティバンクじゃないかなと思います。


QUESTIONから生まれる緩やかな共感の輪。

5年をかけて、QUESTIONは単に課題を解決する場所ではなく、互いに心を開き、人生や未来について「間を置いて考えられる」大切な居場所となっていました。人と人とのつながりがもたらす温かさこそが、2050年に目指す、社会にも人にも優しい街への確かな一歩だと信じさせてくれる、希望に満ちた対話でした。

社会にとって、人にとって心地よい空間とは何なんだろうという「問い」を今後も考えながら、街に関わっていけたらいいなと思います。

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