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MOTOÏとエースホテルとのコラボレーションを控えた2024年7月、エースホテルのレストラン「PIOPIKO」の一角で、前田シェフと早川さんがプロジェクトについて振り返りました。
※コラボレーションメニューの提供は8月31日(土)で終了しています。
●前田 元さん
京都の古書店に生まれ、料理本を絵本代わりにして育つ。京都、東京のホテルで広東料理を10年間学んだ後、渡仏。星付きレストランで研鑽を積み、帰国後は京都ホテルオークラ「ピトレスク」、大阪「HAJIME」を経て、2012年「Restaurant MOTOÏ」を開業。2012年~2023年ミシュラン一つ星獲得。2021年には餃子店「モトイギョーザ」をオープン。2022、2023年ミシュランビブグルマン獲得。
●QUESTION コミュニティマネージャー 早川 兼人
――早川さんとQUESTIONで偶然お会いされた時のことを詳しくお伺いしたいです。
前田:僕は祐作くん(株式会社Q’s 代表取締役、DAIDOKORO店長の前原祐作さん)にずっと色々お世話になっていたので、このソースを作った時に彼に味見してもらおうと思って、あと1階(QUESTION1階カフェ・バー「河原町御池南東1F」)でぜひお客さんに紹介してほしいと頼みに行ったんですよね。「こんなんどうですか。ちょっと見てみてください」って持って行った時に、たまたま早川さんが通りがかった。
早川:最初スルーしようと思ったんですけど(笑) 前田さんのことは存じていたんですけど、怖そうだなって思っていて。
前田:その場で味見していただいたら、早川さんがすごく熱心にお話を聞いてくださった。
早川:ただ、モトイさんご自身で作られたソースのパッケージが残念ながらプロトタイプのレベルだったんですよ。 でもソースにまつわるストーリーがすごくよくて、もっとやれることがあると感じたので、たまたまその2週間後ぐらいに「デザイン事前相談会」(注)っていうイベントがあったので、そこで一緒に考えませんか、と。
(注)有限会社セメントプロデュースデザインとコミュニティ・バンク京信が共催する、自社製品やサービスのデザインに関する無料相談会。
早川:2週間後に「デザイン事前相談会」でセメントプロデュースさんのデザイナーさんとお引き合わせしました。 開発ストーリーが僕にはすごく心地よかったし、何よりこの商品にかける思いの部分に心打たれました。飲食業界は就労環境が良くないというイメージがついていて、それをなんとか改善したいから店の外での売り上げに繋がるようなものを開発したいという話にすごく共感したので、じゃあこの商品が実際売れるためには何をしていきましょうか、みたいな話を1時間ぐらいヒアリングしました。最終的には海外向けの方が相性いいんじゃないですかって話になりました。
前田:そうですね。実際、このソースは海外の方向けに作ったんですよ。海外のお客さん、うちのお店で餃子に香辛料をめっちゃくちゃ使うんで、その代わりになるものを作ろうとしたんです。
早川:デザイナーさんには100社以上の競合のパッケージのリサーチを行っていただきましたね。おしゃれなデザインはいくらでも作れるけど、それだと陳列した時に埋もれてしまうし、いいソースだってことをもっと打ち出せるインパクトのある案を出した方がいいんじゃないか、とか。あとはネーミングですね。
前田:最初はゆずを素材として使用していることにちなんで「ゆずサルサ」とかそういう方向で考えていたんですけど、 そうすると日本人がエスニックなイメージを持って使い方を勝手に限定する、つまりエスニックな料理とかしか合わないって誤解されてしまう懸念がありました。
©RyosukeNasu
前田:実際このソースは和食にも相性が良くて、日本の食卓にも置いていただけるようなものなんです。 この味わい、今までに既存のソースに似たものがないんですよ。となると、「モトイソース」っていう名前の方が、 そのソースの味イコール名前っていう状態を作った方がいいかなと。
早川:僕も食べた時のインパクトが衝撃でした。これをサルサソースって言っちゃうともったいないなって気がしていました。そういうことも含めて、デザイン相談会を経て、直接ご紹介させてもらったセメントさんと練り上げていきました。
ーーその後、エースホテルさんとのコラボレーションのお話が出てきますね。
早川:当時のQUESTIONの館長がエースホテルの担当さんと懇意にさせてもらっていたので、ちょうど製品が出来上がったぐらいで、エースホテルさんとお繋ぎしました。いいものをいいとわかってくれる人たちに届けるのに適切な相手様なんじゃないかっていうことで提案させてもらいました。
前田:(今回コラボする)ウェス・アヴィラさんが来日されるタイミングで一度お会いさせてもらって、そこから数ヵ月後、エースホテルさん側から「ポップアップメニューのコラボレーションはできませんか」とメールをいただいて、そこからコラボメニューを寝る間も惜しんで考える、怒涛のスケジュールで動きました。
早川:2024年になって、いよいよ製品のリリースが近づいてきて、僕の方でも色々販路開拓をサポートさせていただきました。当初から海外から先に仕掛けていきたかったので、一緒に台湾の商談会にもご参加いただきました。現地の反応はすこぶる良くて、実際の反応を見ると、狙いはまあまあ間違ってなかったなって今のところは思っています。
前田:この間、シンガポールの方がうちの店舗でガバッと買っていかれましたよ。お土産にするそうです。
早川:イメージ通りの使い方をしてもらってますよね。手土産になる良いパッケージですし。
前田:目標はタバスコのシェアを取るくらいになること。あちこちに置いてもらいたいですね。たとえばピザに何か一味加えるときにタバスコかけようか、と思ったとき、タバスコの代わりに使ってもらえることを狙っています。タバスコってね、それだけ舐めてもおいしくないですけど、このソースは違いますから。
ーー早川さんと初めてお会いしてから今日に至るまで、何か記憶に残っているエピソードはありますか。
前田:ずっと伴走してもらってるっていう感覚はありますね。まずこの商品自体を本当に 心底気に入っていただいてるんですよ。だから僕も何本無償でお渡ししたことか(笑)
早川:おねだりしました(笑)
前田:でもね、まず好きでいてもらわないと絶対売ってもらえないですから。まず商品が好きで、試していただいてるからこそ、いろんなアイデアを出していただけますし、そういう意味でも1番のファンでいてもらっているってことがすごく大切なことだなと思いますね。
早川:いただいた3分の2ぐらいはちゃんとバイヤーさんに渡してます。 食べてもらうまでのハードルが高いんですよ。僕らがなんぼ伝えたとしても、試食してもらうのが1番なんです。ただ、3分の1は僕が使っていると思う(笑)
早川:あの日、モトイさんに偶然会えてよかったです。QUESTIONはそういうビルであるべきだと思ってます。取引のあるなしが入り口ではなくて、相談に来た人に対してできることをちゃんと丁寧に進めていく。僕らにはそれしかできないので。
前田:これが売れに売れて世界的にヒットしていけば、それに比例して早川さんの京信さんの中での立場が良くなると嬉しいです(笑)
早川:売れたら僕のおかげですって記事に書いといてくださいね!
エースホテル様とのコラボレーションのPR写真の撮影に臨む前田さん
QUESTIONでの偶然の出会いから始まった今回のプロジェクト、プロダクトは完成しましたが、すっかり意気投合した2人の間ではすでに次の展開や企画が持ち上がっています。
前田シェフとQUESTIONのチャレンジを、今後もぜひご期待ください!