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今回お話を伺ったのは、宇治市在住のアーティスト尾上瑞紀さんと、瑞紀さんのお母様である尾上夕香里さんです。
瑞紀さんは子どものころから虫や古生物が大好きな男の子です。就学前に自閉症スペクトラムであると診断された瑞紀さんは、周囲とのコミュニケーションが苦手で、小学校の頃は周囲になじめず苦労することもありました。しかし、お母様の夕香里さんは瑞紀さんの得意なこと、好きなことを尊重し、大好きな古生物の絵を熱心に描くことを応援し続けました。次第に瑞紀さんの描く絵はSNSなどで話題となり、今では学生アーティストとして各地の賞を受賞したり、アートイベントに招待されたりするなど、充実した日々を送っています。
2023年には宇治市の中村藤𠮷平等院店において初個展を開催、2024年6年には、同社より依頼を受けて巨大キャンバス画「Memories of the tea fields(茶畑の思い出)」を描き上げ、中村藤𠮷四条店に飾られています。実は、尾上さんご一家と中村藤𠮷さんをお繋ぎしたのは、瑞紀さんのことを知るコミュニティ・バンク京信の担当者でした。
今回、瑞紀さんご家族のチャレンジをサポートしたQUESTIONコミュニティマネージャーの石津亮が、瑞紀さん・夕香里さん、コミュニティ・バンク京信の森裕紀さんと一緒に、京信との出会いやQUESTIONで開催したアート展示を振り返りました。
お話を伺った方
- 尾上 瑞紀さん
プロフィール
2010年、宇治市生まれ。幼少期より虫に興味を持ち、図鑑を買ってもらったことをきっかけに、4歳頃から古生物の絵を描きはじめる。2018年、宇治市子ども手作り文化祭審査員特別賞、2023年、蒲郡市生命の海科学館ポスターコンクール特選受賞。2023年、中村藤𠮷平等院店において初個展を開催。2024年、同社より依頼を受け制作した巨大キャンバス画”Memories of the tea fields(茶畑の思い出)”は、中村藤𠮷四条店に常設展示されている。2022年以降、東京・京都・大阪など各地で個展やグループ展を開催。 - コミュニティ・バンク京信 西宇治支店 森 裕紀さん、QUESTION コミュニティマネージャー 石津 亮
営業担当者のひらめき「せっかく宇治にこんな素敵なアーティストがいるんだから、もっと発信したい!」
石津: 宇治支店の皆さんが中村藤𠮷さんの平等院の夏祭りを共同で企画して、そこに瑞紀さんを案内したと聞きました。
森: 尾上さんご一家とは、もともとお父様のご事業関係でお取引いただいていまして、たまたま尾上さんのご自宅に書類をお届けにあがったところ、目の前にすごい光景が広がっていたんですよ。そのときに初めて瑞紀さんの作品を拝見しました。
森: 瑞紀さんの作品を目の当たりにして、東京の作品展等にはよく出ているけど関西ではあまりないと聞いて、「せっかく宇治にこんな素敵なアーティストがいるんだから、もっと発信できたらいいのにな」と思っていました。そんなとき宇治の中村藤𠮷さんから、地域の子どもたちが集まれるイベントを開催したいとご相談を受けて、そこで瑞紀さんのことも発信したいなと思って、中村藤𠮷さんにお繋ぎさせていただきました。
森さんが夏祭りの企画の一環として瑞紀さんの絵を中村藤𠮷の中村省悟社長にご紹介したことがご縁となり、2022年10月にリニューアルオープンした中村藤𠮷平等院店2階で瑞紀さんの展示イベントを開催。さらに、2023年10月にオープンする「京都髙島屋S.C.T8」内の中村藤𠮷四条店を飾る絵を製作してほしいと依頼が舞い込みました。
石津: お母さん、中村藤𠮷さんとの話が決まったときはどう思われました?
夕香里さん: 森さんから聞いてへんかったら詐欺やと思いましたよ(笑)昔に描いた、リビングに収まらないから玄関に飾ってあったようなものを夏祭りに持っていっただけなので。東京や大阪でのイベントは、瑞紀のイラストをプリントした小物の物販メインで、絵も一枚持って行くくらいだったので、今回のお話をいただいて一週間くらい「うそやろ」って言ってました。
森: 中村藤𠮷さんの社長、専務ともにアートに興味があることは存じていたので、瑞紀さんの絵に共感していただけたらいいな、藤𠮷さんと繋がれたらいいなと思っているなかで子供向け夏のイベント開催、これはドンピシャやな、と。同社は当金庫が参画する「BASE ART CAMP」にも参加されていて、アートへの関心や理解が深くいらっしゃるんです。
夕香里さん: 森さんに中村藤𠮷さんをご紹介いただいて、本店や平等院店の店長さんとお話させてもらって、その後社長と奥様とお子さんが我が家に来てくださって、階段に置いている絵を見て目を輝かせてくださったんです。
夕香里さん: 平等院店のイベントが終わって半月くらいして、直接自宅に(中村藤𠮷の)社長と奥様が来てくださって、T8の四条店に飾る絵のお話をいただいたんです。
石津: 瑞紀さん、中村藤𠮷さんのお店のアートを描いたときのことは覚えてる?
瑞紀さん: 人から来た依頼を受けて描くのは初めてだったから、楽しかった。
石津: 瑞紀さんは自分の頭の中のインスピレーションとか好きなものを転写していくタイプだと思うんだけど、そうじゃなくて「これを書いてくれ」って依頼を受ける形で、しかも3メートルもあるでっかいでっかい絵を描いてみて、どうでしたか。
瑞紀さん: 最初は描くの大変だったけど、描いていくうちに仕上がりが見えてきて、完成図が浮かびあがってくると、最後らへんはすごくスムーズに描きやすくなった。
石津: 最初は大変だったんだ?
瑞紀さん: うん。最初はしんどかった。ちょっと、キャンバスのサイズ感が……(笑)
夕香里さん: 1m×3mって、メジャーで計ってみたりしましたけど実際のサイズのイメージがどうしても湧かなくて、実際にキャンバスに描き始めるまで、半年ぐらい打ち合わせしました。
森: 納得いくまでかなり時間かけましたね。社長も要望をしっかり伝えていらっしゃったので。
夕香里さん: 社長が描いてほしい絵のイメージが、本簀(ほんず。日光をふせぐために茶畑を覆うよしずわらなど)と、寒冷紗(かんれいしゃ。霜がおりるのをふせぐために茶の木を覆う黒い布)と、直接太陽を浴びる茶畑の三つだったんです。でも瑞紀は無機物を描くのが苦手で、あと本簀や寒冷紗がどんな感じなのか経験があんまりなかったので、(瑞紀さんを見て)めっちゃ見に行ったなあ? あらゆる茶畑を見に行って、実際に葉っぱも触ったり、何回か本店にもお邪魔して、雨上がりの葉っぱの感じとかを掴もうとしました。
夕香里さん: 社長もこだわりを伝えてくださって、妥協せずとことん瑞紀と話をしてくださいました。社長、奥様と一緒にうちに何度も相談に来てくれはったんですけど、瑞紀はマイペースなので横でiPadにイラスト描いたりしてるんですよ。私が慌てて注意すると瑞紀の個性を理解している奥様が「そんなん言わんといてあげて」ってかばってくださったこともありました。
森: 今まで描いた中で一番大きいよね。企画から完成まで結構かかりましたよね。1年ぐらいかかったかな。
瑞紀さん: 長方形だけど横にも長すぎるし、今までにない形だから、構図が思いつかなかった。
夕香里さん: 最初にお話をいただいてから1年くらいかかりました。社長も奥様もずっといつまでも待つって言ってくださってて、何回もやり取りさせてもらってる間にお断りされるんちゃうかなって親としてはドキドキしてたけど、この子は本当にマイペースで……ヨッシャやったろうみたいな情熱が見えるタイプでもなく、淡々としてるんでハラハラしてました。
石津: お店に実際に飾られたときは、どういうお気持ちでしたか?
夕香里さん: 「明日から飾ります」って言われて、この子は学校やったんで待ちきれずに主人と先に見に行きました(笑) ほんまに感無量という言葉なのかな、気持ちを表せなかったです。これ、息子が描いた!って感覚っていうか、やれやれっていう気持ちもありました。
「同級生にもっとこの子に関心を持ってほしい」親心からはじまったアート企画
石津: 瑞紀さん、はじめて会ったときに比べると、表情も雰囲気もずいぶん変わったなと、そこが印象的です。
森: そう、はじめは僕とも全然喋ってくれなかったんですよ。「iPadで何描いてるの~?いつおしゃべりできるかな~?」って横から覗いたりしていました。
夕香里さん: 私がそれをカバーしようと思ってこんなお喋りになっちゃったんですよ(笑)
石津: 瑞紀さんは3人兄弟の末っ子で、お兄さんお姉さんに対してはめちゃくちゃ教育が厳しかったっていうことを聞きました。
夕香里さん: 上のふたりには、勉強のこととかは一切言わないかわりに、挨拶とか、お友達のとこ行ったらきちんと靴揃えなさいとか、そういう人として大事なことや礼儀はきちっとしてました。ただ、若い時の子どもだったので厳しくしすぎちゃったってずっと気になっていて、その分この子は顔じゅうチョコまみれにしようが何しようが一切何も言わんと自由に育ててあげようって主人と決めました。
石津: 絵を描くこともそのうちのひとつですか?
夕香里さん: そうですね、絵を好きになったのはたまたまですけど。3、4才の頃から年相応に虫に興味を持ちだして、ダンゴムシとか虫の死骸をポッケに入れてそのまま寝ちゃったりして。小学校のあいだはこの子が虫を持って帰ってくるので、季節ごとの虫が部屋を飛び交っていました。私は虫めっちゃ苦手でしたけど、虫を見つけて観察するとき瑞紀の目の色が変わるのでね。上の子2人の教訓もあって、この子には好きなことさせてあげよう、伸び伸び育てよう、あれもこれもあかんって言ったらかわいそうやなって。あかんって言いそうになるたびに、主人とふたりで「トムソーヤみたいにするんやろ!」って(笑)
こうして、瑞紀さんは大好きな虫や古生物を絵に取り込むことに没頭する日々を送っていました。ハンデを持ちながら自分の好きなことを突き詰めるうちに瑞紀さんに自己肯定感が芽生え、いつしか瑞紀さんの言葉から「夢」「希望」が出るようになりました。夕香里さんは親として「何かをしてあげたい」という気持ちになり、森さんに瑞紀さんを中心としたアート展をQUESTIONで開催できないかと相談しました。
石津: 僕、ずっと不思議だったんですけど、尾上さんはどこでQUESTIONを知ってくださったんですか。
夕香里さん: 私がホームページを調べさせてもらって、森さんに相談したと思います。
森: 僕が瑞紀さんの絵を初めて見て「すごい!」って思ったときに、「QUESTIONっていう建物があって」って説明させてもらいましたね。その後に中村藤𠮷さんとの夏祭りイベントもあって、「QUESTIONでも何かできそうなイベントがあったらご紹介しますね」って話をしていました。ただ、そうは言ってもなかなか前に進まへん状態の中で、「QUESTIONでイベントをしたい」って尾上さんからお聞きして、しかもコンセプトとかもある程度固まっているって言っておられたんで、さっそく石津さんに相談させてもらいました。
石津: そうそう、相談を受けた時点ですでにたくさん参加希望の人が集まっていましたよね。
夕香里さん: ちょうどその頃、中村藤𠮷さんの企画と並行でテレビ番組の取材もあったので、この子もだいぶ質問に答えたり、しゃべれるようになりまして。経験を積んで自信もちょっとついてきたかな、という状態だったので、もうちょっと広げてあげたいなと思ったんです。
夕香里さん: そのテレビ番組の中の企画で、瑞紀が普段から仲良くしていたお友達に収録に参加してもらう機会がありまして。そういうのを見ている中で、虫や古生物の絵を描くっていうこの子が得意なことで、特に京都、宇治で外に出る機会があったら、同級生がもっとこの子に関心を持ってくれるかなっていう思いが芽生えました。一つ積み重ねていったら、次は学校生活を楽しくさせてあげたいとか、友達ができるようになったらいいな、とか……この子がもっと楽しくて幸せになって、毎日が充実していてほしいという親心ですね。
夕香里さんのお話をうかがった森さんは、QUESTIONの石津に相談。2024年8月、夕香里さんの願いが詰まったアート展「Young talent preview」をQUESTIONにて開催しました。
9組10名の集合展で、開催日当日は300名近くの企業や個人の方にお越しいただきました。夕香里さんの親心と行動が全国で同じ境遇にある人達を動かしたのです。
石津: お友達も含めてアーティストが10人集まって一緒に展示をしたけど、どうだった?
瑞紀さん: 他の絵を書いてる人たちとやり取りできて、楽しかった。またあんなふうに他の人と関わってみたいな。
「せっかくならお友だち同士をみんな繋げたい」と奔走
石津: 企業の大規模な展示はともかく、そういう発達障がいなどのメンバーによるグループ展示、しかも個人主催ってなかなかないと思いますよ。しかもお母さんが企画される展示って、日本で初めてなんじゃないでしょうか。
夕香里さん: 各地でグループ展とか個展とか開いて活躍されている方はやっぱりそれなりの基盤があるんです。例えばアールブリュット(※)っていって、自閉症などの方でアート活動されている方は、事業所が主催をしてくださるとか、そこの事業所からまとめて作品展に応募されるとか、そういう支援があるんですけど、全く個人の、しかも素人で何の経験もない私がやらせていただけたのは、ひとえに勢いだなと。
(※)フランス語で「生の芸術」を意味し、障がいのある芸術家らの作品を指すことが多い。
夕香里さん: この子と同い年くらいのお友達がいっぱいいて、その母同士でSNSでの付き合いをしていまして、いつか会いたいねってそれぞれと話していたんです。例えば、今回アート展に参加してくださった大平ひかるちゃんは岩手の子なんですけど、ひかるちゃんも自然が大好きなんです。野草やキノコのことをよく知っていて、「瑞紀とひかるちゃんはこんなに距離があるけど、出会ったら二人で山を駆け回って、いろんな生き物を見つけて一緒に絵を描くのを楽しむやろな、1日やったら足りひんやろな」って。今回はそういう個人個人で繋がっているお友達をみんな繋げてしまいたいっていう思ったんです。
どこのお子さんもお母さんたちもいい人ばっかりなんです。自分だけがこの方たちとお付き合いがあって「いい人やわ~」って思っているだけじゃなくて、みんなにも知ってもらいたいっていう、本当に私の思いつきなんです。
石津: 最初にお話をお伺いしたとき、アートを展示するには設備面で相性が良くないので難しいかなと思ったんですが、そういう夕香里さんの熱意に惹かれましたね。
夕香里さん: 森さんと石津さんが引っ張ってくださったのが印象深いです。私が頭の中でぐるぐると巡らせていることを一つずつ形にしていってくださるので、おまかせしますとかじゃなくてついてきます!ついてくんでお願いします!っていう感じです(笑)
石津: 全国の人をまとめるのは難しいところもありましたよね。どうしてもオンラインやテキスト上だけの共有になってしまう部分もあって難しいところもあります。実際イベントを終えてみての感想はありますか。
夕香里さん: 本当に良い勉強でした。この年になって初めて身になる勉強をさせてもらったっていう実感があります。幼稚園の会長とか長男のサッカークラブの会長とか、保護者がやるようなまとめ役は結構やってきたんですけど、こういう企画は初めてやったんで、やっぱり難しさもありました。
人と繋がることで子どもたちの気持ちも変化「いずれは子ども同士がつながって成長してくれたらうれしい」
夕香里さん: 何でもすぐ「やります!」って安易に言っちゃうんですけど、それもあかんなあって気づきました。何でもできるって言って人に期待させておいて、できなかったら最後に裏切るっていうことになる。そういう自分の喋り方も勉強していかなあかんな、と。絵のことは置いといて、企画すること、人を集めること、感謝すること、全てが私にとって勉強になりました。瑞紀のこととは別の感想ですが。いろんなことを吸収させていただけたのは、森さんとQUESTIONさんのおかげです。感謝の気持ちでいっぱいです。
石津: こちらも、あれだけのアート展をやるっていうのは初めての企画でしたし、非常にたくさんの方の中が来られて、入場者数も結構多くてよかったです。今後またやるとしたら、主催の皆さんの目的をもっとクリアしていけば、招待する人やどういう人に来場してほしいかって点も変えていけると思います。
夕香里さん: 京信さんとQUESTIONさんに任せたら、間違いないで!って思っています。何でも相談聞いてくれるでって、あちこちに言っちゃってます(笑)
石津: 我々としては本当にありがたい話です。でも最初は、森さんが繋いでくれへんかったら、多分実現しなかったですから。僕自身も、イベントを通じて、いわゆる自閉症の方々について色々勉強させていただきました。森さんはアート展をご覧になって、どうでしたか。
森: 瑞紀さんやいろんなアーティストの絵を見て回っていて、三重県から来たRICOちゃんの絵を見ているときにRICOちゃんのお父様とお母様がお声がけくださって、いろいろお話をさせていただいたんです。今回のこのイベントに関して本当に感謝しているんですって言っていただいたことにすごい感動しました。というのも娘さんが人前で絵を描くことは今までなかったそうです。そういう子たちが集まってみんなで輪になって、誰かが描き始めたら、私も!って絵を描いている姿にも親御さんは感動されていました。人と繋がることでその子たちの心境に変化があったんだと感慨深いです。
僕自身、途中で転勤になって携われなかった部分はあるんですけど、今回のイベントが成功して、尾上さんにも感謝していただけて、僕もアクションを起こせてよかったなと思います。
夕香里さん: 森さんと出会えなければ今はなかったです。それにQUESTIONで石津さんと出会えたおかげで宇治市役所との展示のお話(後述)もいただいて、これってまだ夢ちゃうやろか、と主人と話しています。この子はあいかわらずマイペースですけどね。
瑞紀さん: 瑞紀さんはイベント終わってみてどうですか。またやりたい?
瑞紀さん: もう一回やりたい。描いているところを見せ合ったりとか。他のアーティストの人とのやり取りが一番楽しかった。
夕香里さん: 今回参加してくださった10名のお子さんって、それぞれの地域で活躍をされているんですけど、東京とかに呼ばれるイベントって常に周りは全部大人の方で、その中に子どもは自分1人だけ、という状況なんです。この子も本当にずっとそういう経験ばっかりでしたし、子供たちが少しずつ距離を縮めていって、一緒に絵描こうって声を掛け合える場っていうのが今までなかった。こうやって子供たちが集まったら、そういう化学反応が起きるんちゃうかってどの親御さんもずっと胸に抱いて会場に来てくださっていたと思うんです。
夕香里さん: 年齢に幅はあるんですけれども、絵という共通点があるので、一緒に一つの紙に重なり合う絵を描いたりするんですよ。アート展に参加してくれたRICOちゃんとAPIPOちゃん(参加アーティスト)も、初めは机の端っこと端っこに離れて座っていたんですけど、ちょっとずつ距離を縮めて、しまいには横並びで一つのキャンバスに絵を描いていました。年が近いお子さんたちが一緒になってグループ展をすることを、今回限りじゃなく、参加してくださったご家庭が各地域でやってくださったらいいなと思います。
今回、子どもたちは、同い年の子と一緒に過ごせて勇気をもらえたとか、友達になれたとか、そういう経験をしました。今度は親同士じゃなくて、子ども同士がつながって成長してくれたらいいなと思います。自分たちの力でイベントをしたり、アートの会社を作ったりね。
石津: 本当は子どもたちだけでやってもらうのが一番いいですよね。今回は大人の企画に子どもたちが参加するイベントでしたけど、もし来年、機会があれば、子どもたちを主人公にしたイベント、彼らが主体で、彼らのステージを用意して彼らがつくりあげていくことをやっていけたらいいなと思いました。
夕香里さん: 今は親が繋げていますけど、それぞれのお子さんが活動の幅を広げていって、たくさん経験をする先で自分のやりたいことを自分の力で見つけてくれたらありがたいと思います。
石津: 何より瑞紀さんのこの姿が物語っていますよね。今こうして顔を上げて前を向いている様子を見ていると、ずいぶん変わられたなと思います。
(写真:QUESTION 横山里世子)
編集後記
今回の展示会をきっかけに、当金庫より瑞紀さんを宇治市役所にご紹介したことがご縁となり、瑞紀さんは宇治市役所が企画する、障がいがある方のアート展示会「尾上瑞紀展ー地球は人間だけが主役じゃないー」の第1号アーティストに選ばれました。さらに瑞紀さんは同展でウミウシの粘土細工を作る講師も務めることになりました。イベントは2024年11月25日から2025年5月までの半年間にわたって開催されます。
インタビュー当日、瑞紀さんが持参してくれた絵は、2024年12月7日から愛知県蒲郡市のいのちの海科学館で開催する瑞紀さんの作品展で展示される予定です。テーマはカンブリア紀の海で、瑞紀さんの古生物の知識がたっぷり詰め込まれています。
8月に開催したアート展「Young talent preview」では、夕香里さんの呼びかけで瑞紀さん含め10名のキッズアーティストが参加をしてくれました。今回の展示は「皆さんの取組を知っていただくこと」また「彼らの今後の活動のプラスになれば」と思い企画・運営に携わりました。その結果、嬉しいことに多方面よりコラボレーション、またマッチングの声をいただいています。
(コラボレーションの一例)
・地元クラフトジンのラベルデザインのコラボ
・行政が庁舎内に展示スペースを作成
・地元企業の製品デザインのコラボ
・塗り絵の下絵にして、子どもたちへ発信
これらはほんの一部です。学生アーティストの皆さんの成果を引き続きQUESTIONから発信をしていくとともに、来年もまた新たな「Young talent preview」を展開できればと思います。
(QUESTION 石津亮)