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QUESTION TALK vol.19 『銭湯の未来を考える』を開催しました!
第19回目となる今回のQUESTION TALKは、『銭湯の未来を考える』というテーマで、株式会社ゆとなみ社代表取締役の湊三次郎さんをお招きしました。
日本でも有数の「銭湯の街」である京都は、地震など天災による被害が少なく、戦争でも大規模な空襲被害を受けなかったため、戦前に建てられた趣のある銭湯や、国の有形文化財に指定されている銭湯が数多く残っています。
一方で、10年前には京都市内だけでも180軒ほどの銭湯がありましたが、年々上がり続ける光熱費や経営者の高齢化、後継者不足等が課題となり、今では京都市内の銭湯は半数の90軒を切っています。
そんな現状を打開すべく、「日本から銭湯を消さない」を信念に活動されているのが湊三次郎さんです。湊さんは京都五条にある「サウナの梅湯」を第三者承継という形で引き継ぎ、見事に再建され、現在は梅湯の他にも6つの銭湯を第三者承継されています。
当日はファシリテーターを予定していた株式会社ツナグム代表取締役の田村さんに代わって、本イベントを企画したQUESTIONコミュニティマネージャーである私(髙木)が急遽ファシリテーターを務めることとなり、不安いっぱいでしたが、そんな心配も吹き飛ぶくらいに会場、オンライン問わずご参加いただいた方々から質問の嵐でした。
以下、一部ですが、当日のご質問と湊さんの回答です。
Q.銭湯業界が衰退していく理由は何だと思いますか?
A.昔はのれんをかけて座っているだけでお客様が来てくれましたが、今は銭湯業界に限らず自分たちからお客様を引っ張ってこなきゃいけない時代になっているのにできていないんです。その理由として高齢化もありSNSの発信ができない、体力的に厳しいなどがあります。銭湯って風呂掃除をしてオープンしたら番台に座って受付をしてというところで簡単に見られがちなんですけど、実はそれだけですごく拘束されるのでSNS発信などのプラスαの仕事をする余裕がないんですよ。じゃあ人を雇えばいいじゃないかという話なんですけど、やっぱり人件費がかかってくるので中々踏み切れないんですよ。だから銭湯ファンの皆さんは銭湯を残して欲しいと思っているんですけど、当事者からすると細々と家業を続けていけばいいや、っていう考えの人も割といるので難しいんですよね。
Q.時代の変化についていけない業種は銭湯に限らず衰退していくという考えなのでしょうか?
そうですね。実はまちの喫茶店などの継業も考えていて、やり方を変えればもっと上手くいくのになと思うんですけど、でも銭湯も喫茶店も営んでいる当事者たちからするとやっぱりそういったことを望んでいないケースもあるんですよね。Q.銭湯を残す活動に対して地域で応援してくれる企業がいた場合、スポンサー的な立ち位置で関わってもらうことは考えていますか?
A.はい。ゆとなみ社の場合だとこれまで主に自己資金とクラウドファンディングで資金調達をしてきましたが、どうしても限りがあるので次のフェーズでは、お金を持っていて応援してくれる企業の傘下に入ったり、うちがサポートする形で継業を達成していくことを考えています。
僕自身もうちの社員も銭湯で金儲けをしたいということではなく、銭湯を残していきたいという想いで活動しているのでそこの手段は問わないですね。
Q.サウナ好きの人たちに銭湯の魅力を伝えるなら?
A.一番の魅力は近所にあってフラッと立ち寄ることができたり、コミュニティの場となっていることですね。サウナーの人からすると、サウナに入って水風呂に入ってトトノって家に帰る、みたいな感じだと思うんですけど、やっぱり銭湯ならではのローカルと歴史を味わってもらいたいなと思いますね。
Q.日本は地震が多い国ですが、ゆとなみ社として地震対策は何かされていますか?
A.大体の銭湯が古い建物なので、もし地震があった時というのは考えておくべきだと思っています。そこで試験的にですが、入浴中の避難訓練を梅湯で始めました。
今までも銭湯の避難訓練はあったんですけど、着衣して明るいままで行っていたんです。でも本当に地震が起きた時だったら床は濡れているし、夜だったら電気も消えて真っ暗だし、鍵もなくて、ガラスも割れているかもしれないという状況になった時に、どう対応すればいいかをスタッフと考えたところ、避難着を配ってとにかく早く外に出てもらおうということになりました。そして実際に常連のお客さんにも入ってもらい、地震が起きて店が暗くなった状態でスタッフが誘導して外に出てもらって、参加したお客さんからフィードバックをもらう、ということを実施していて、これがようやくマニュアル化できるようになってきたので、他の店舗でもやっていこうと思っています。ただ、店舗によって構造が全く違うのでそれぞれの銭湯でベストの対応を考えています。
Q.私は湊さんの「銭湯を日本から消さない」という信念に共感してからよく銭湯に通ったり、グッズを買ったりしていますが、他に何かできることはないでしょうか?
A.今されていることが全てですね。一般の方が銭湯を応援できることって銭湯に通ったり、クラウドファンディングがあれば支援したりということぐらいしかなくて、それでも十分だと思うんですけど、それでも何とかしたいっていうことであればプレーヤーになるしかないと思います。Q.銭湯だからこそ担える役割はありますか?
A.正直銭湯は無くても困らないものなので、無くなっても問題ないと思います。実際に僕の住んでいた浜松には銭湯は一軒もなかったので京都に来てから知りましたし。
でもあったらあったで豊かな生活が送れると思うんですよ。コミュニティが生まれたり、豊かさの象徴だと思うんですよ。よく考えたら温泉はそこに湧いてる温泉を提供しますけど、銭湯はわざわざお湯を沸かして提供する訳じゃないですか?それが江戸時代から脈々と続いてスーパー銭湯など形を変えながらにはなりますけど、その根幹にある銭湯っていうのが細々とでも続いているのがいいですよね。
その他にもたくさんのご質問を皆さんからいただき、気付けばもう終了の時間に!!
(質問にお答えできなかった方、ごめんなさい!!)
ファシリテータ―の交代というハプニングはありましたが、参加者の方々が温かい雰囲気を作ってくださり、とても良い時間を皆さんと過ごすことができました。
今回のイベントを通じて、銭湯を経営する人(プレーヤー)と銭湯が好きな人(ファン)の2種類だけでなく、銭湯を一緒に守っていく人(仲間になる人)みたいな立ち位置の方がいたらいいな、そういった活動をゆるーくQUESTIONで実施していきたいなと感じました。関わり方は人それぞれ、丁度いい温度で接していくことが「銭湯の未来を守る」ことにつながるのではないかと思います♨
ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました!!
文章(QUESTION 高木)