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QUESTION TALK Vol.18 『身近な「ごみ拾い」から環境問題を考える 〜明日はみんなでごみ拾い〜』を開催しました。
第18回目となるQUESTION TALKは、『ごみ拾い』をテーマに、リアルとオンラインのハイブリッドで開催しました!
ゲストに、「ごみ拾い×SNS」を世界115カ国に活動を広げている株式会社ピリカの小嶌不二夫さん、地元・京都で住民の方々と一緒に清掃活動を行っている南丹清掃株式会社の山本一文さん、リユース食器レンタル等ごみを出さない取組を行っているecotoneの太田航平さんをお招きしました。モデレーターは学生時代からごみ拾い活動を続けている株式会社ツナグムの坂井晃人さんに務めていただきました。
まずモデレーターの坂井さんが「ごみ拾いを短いアクションとして取り組んでいる人は多いですが、もう少し先の未来を見ながらごみ問題について一緒に考えるイベントにしたいと思っています」と切り出し、ゲストの皆さんの事業紹介とともに「それぞれが思う問題」についてお話しいただきました。
小嶌さん
「2050年までに海を漂うプラスチックごみが魚の重量を上回ります。そうなれば生態系、人体、気候変動などさまざまな影響が出ます。そうはさせまいとするのがピリカです。ミッションは2040年までに流出するごみの量と回収されるごみの量を逆転させることです。そのための技術やサービスを生み出し、それを世界中に広め、問題の解決を目指しています。その一つがごみ拾いを記録して発信するSNS『ピリカ』です」
山本さん
「南丹清掃は、主にインフラの清掃・管理、収集運搬を行っています。自社で廃棄物処理施設も保有し、2022年には資源物のリサイクル施設も設立しました。また毎月2回、地域の不法投棄に対しボランティア清掃を行っています。どこにどれだけ悲惨なゴミがあるのか、地域の方にも知ってほしくて、地域の方を巻き込んで清掃活動を心がけています。」
太田さん
「私たちは、そもそもごみを出さない、何回も使うというマーケットを広げる活動、つまりリデュース・リユースの2Rの視点と仕組みづくりを進める活動をしています。リサイクルは資源を戻すことですが、リサイクルの前にそもそもごみを出さない・何回も使うというマーケットを広げない限り、リサイクルしても結局エネルギー消費が上回ってしまいます。」
その後は、坂井さんより質問を投げかけながらトークセッションが進んでいきました。
ーー京都や日本、世界の環境問題についてどんな視点で見ていますか?
小嶌さん「小学生の時に図書室の本を読んで環境問題のことを知り、とても大きく深刻な問題だと思い、大人になった時に自分が解決したいと思いました。運よく現在その問題に携われています。引き続き1番面白くて大きな問題だと感じています。」
坂井さん
「小嶋さんが手掛けているごみ拾いを見える化するアプリ『ピリカ』の先の展望を聞かせていただけますか。」
小嶌さん
「現在、ざっくり10兆個のごみがポイ捨てされています。ピリカ上で拾われた2億5千個のごみの1万倍は拾わないといけない。今後、1人あたりのごみ拾い回収量を増やす、ポイ捨ての数を減らすなどいろんなアプローチが必要です。活動を長続きさせるにはどうすればいいか、ごみ回収量を増やすにはどうすればいいか、などに取り組んでいこうと思っています」
山本さん
「人が歩く主要道路はごみ拾いをしてくれる人たちがいるので、大きなごみはあまり落ちていません。それよりも一番問題なのが不法投棄です。最初は従業員と歩いてごみ拾いをしていたんですが、不法投棄が大量にあるのを発見してほっておけなくなりました。ただ、回収しても同じところに同じようにごみが捨てられ、イタチごっこです。ごみ拾いは諦めず執念を持って続けることが大事だと思います。あとは住民に現場を見てもらって、現状を知ってもらうことが必要です。」
太田さん
「ものの豊かさを求めるのか、または心の豊かさを求めるのか、ということです。大量生産・大量消費の世の中は変えていくべきだと考えている人がほとんどです。ただ環境問題の難しさは、頭でわかっていても行動・行為に現れないことです。行為をいかに引き出すか、ということが我々の課題です。」
ーーみんなにごみ問題に対して当事者意識を持ってもらうにはどうすればいいでしょうか?
山本さん
「ペットボトルなどごみを出す際に適切な分別が必要だということを、一人一人が認識してほしいです。拾ったゴミ全てが燃えるごみではなく、資源ごみがあるという認識を持ってもらえるよう活動しています。」
小嶌さん
「人にどうやって環境配慮行動を起こさせるか研究していた友人の論文に基づいてピリカができました。研究結果によれば、人は周りの人間の影響を受けるので、同じタイミングで皆がやっている行為は響きやすく身近に感じられます。例えばアフリカよりも同じ市内など自分に近い場所での行動の方が真似しやすいです。私たちは人々が行動に移しやすくする工夫をしています。」
坂井さん
「時間と場所という視点は、祭やイベントなど地域で時間と場所を共有する太田さんのボランティア清掃活動とも紐づくと思いますが、実感としてどうでしょう?」
太田さん
「1人でやるより『皆でやっている感』はとても重要です。ごみをどれだけ拾っているかが可視化される、実績が実感されることはとても大切ですね。」
ーーごみ拾いを通じてもっとこういう活動をやっていけばいい、など、これからのごみ拾い活動はどうアップデートしていくでしょうか。
小嶌さん
「より仕事っぽく、より義務っぽく、より効率が良くなると思います。ごみ問題は、気候変動のように何となく『やばい』と予測されている状態から、いよいよ実害が出てきて人類全体が共通して立ち向かう問題だという意識が増しているからです。政府や企業が対策を打ち出し、出来ていないところは責任を問われる状況となっています。機械がごみを回収するような未来に近づいていくと予想しています。」
山本さん
「全くわからないですね。環境問題は相当複雑です。とりあえず、子どもから大人まで誰でも参加できるごみ拾いを続けていきます。そしてごみを拾っただけで終わらず、どのごみも手を加えたら廃棄物は資源物になるというイメージを環境学習など通じて作っていきたいです。」
太田さん
「ペットボトルごみの8割ほどは水やお茶を購入することで発生しています。お茶は沸かす、水は水道水を利用するなど、私たちの生活の見直しが必要です。そして捨てるのではなく、返却するマーケットを拡大するべきです。もう一つはごみを拾わない世の中をどう作るか。マナー・モラルに訴えかけるだけではダメで、それを捨てられない仕掛・仕組を作ることが必要だと思います。例えば、アプリ「ピリカ」という鷹の目で実験した結果、廃棄物が捨てられやすい所がわかったなら、そこに捨てられなくするよう仕組みを作るとか。」
坂井さん
「マーケット的にも伸びしろがある領域ですよね。街で落ちているごみを可視化し、なぜここに落ちているのか、プロセスを含めて可視化していくことで、出口を見ながら入口を改善していく、といったことがそれぞれお三方の立場から出来るといいと思います。」
ーー最後に、「ごみ拾いを始めたい!」という方は何から始めればいいでしょうか?
小嶌さん「ピリカです!!」
山本さん「1人でできる部分からでも大きい力になります。1人がしんどくなったら南丹清掃にお声かけを!」
太田さん「自分のごみ袋にはどういうごみが入っているのか把握することが大事です。自分のライフスタイルを客観的に理解し、何を減らせるか考えてみてください。自分を見つめ直すことが何かを変えるきっかけになると思います。」
誰しも行ったことがある、ごく身近な活動「ごみ拾い」は、SDGsへの理解が広まり世界中でごみ問題や2Rに真剣に取り組み始めている今こそ、改めて価値を見直されるべき行動ですね。
次回のQUESTION TALKもお楽しみに!!
(文章・天川 謙)