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QUESTIONに関わる企業や個人にスポットを当ててご紹介する連載「Qパートナー紹介」。
“問いの交差点”QUESTIONに相談したい「問い」や、ここに集う人々と一緒に考えていきたい「問い」について紹介します。
第10回は、株式会社 中藏 常務取締役の古川さんです。
古川亮太郎(フルカワ リョウタロウ)さん
株式会社 中藏 常務取締役。1976年生まれ。京都市出身。湯熨斗屋(ゆのしや)の次男として育つ。自室のインテリア図面を描いて遊ぶなど、幼い頃から建築やインテリアに興味があった。京都市内の小・中・高校を経て京都工芸繊維大学へ進学、22歳の時に休学してバックパッカーで世界放浪。復学し、同大学院 造形科学研究科を修了、その後は大手ゼネコンの設計部に入社して東京勤務。帰省した際に、街並みが変わっていく様子を目の当たりにし、京都で建築の仕事をしたいと思い、実家の建築をしてもらった縁から株式会社中藏に入社。2011年からは、住宅の新築事業に携わるとともに、京町家の改修を手掛ける。2015年には京町家をリノベーションした旅館「藏や」をオープン。「つなぐ」をキーワードに建築設計・施工・介護・観光・地域・学校など、様々な分野や事柄をつなぐ活動を行っている。#町家 #朱雀共同計画 #街づくり #海外放浪 #本 #観葉植物 #家庭菜園 #散歩 #お酒
100年後も愛される京都らしい街並みを残していきたい
ーー古川さんは、どのような問いを持っていらっしゃいますか?
「いかにして100年後まで、京都らしい街並みを残していくか」ですね。
クロアチアやイタリアなどヨーロッパでは何百年も前に建てられた建物が今でも多く残っています。それに対して、日本は経済発展を追い求めた結果、50年前と今では全然景色が違うんですよ。京都でも三条地域や京都駅周辺などほとんどの地域の景色が変わってしまって……。でも最近になって昔持っていた歴史や和のアイデンティティみたいなものを無くしたことにようやくみんな気づきだしました。でも一度失ったものを元に戻すには100年くらいかかるんですよね。ただ、長いスパンで考えたら100年って短いですし、それなら100年かけて元に戻していけば良いんじゃないかと思って京町家を残す活動に力を入れだしました。
ーー京町家を残していきたいと思われたきっかけは何ですか?
大学3年生の時に休学してバックパッカーとして海外に行ったことです。
子どもの時、中藏に実家を建ててもらったことがきっかけで建築の世界に興味を持ったんです。大学で学んでいたのは西洋建築やアート作品ばかりでした。だから、「現実の建築の世界ってどうなんやろ?」って思って、他の国の建物を見に行きました。そこで感じたのは、海外の建物は統一感もあり日本に比べて建物が保存されているということです。なのに日本の建物は木造の建物もあればコンクリートの建物もあったり、家の大きさや高さもバラバラで何でこんなに統一感がないんやろって思ったんです。
日本に帰ってきてからは一旦外から京都を見たかったこともあり、東京のゼネコン会社に就職しました。でも、僕が発信したり何かを変えようと思っても、東京は市場も街も大きすぎて、僕としては京都も統一感のない建物ばかりの街になって欲しくないし、どうしたらいいのかって考えた結果、「京町家を残していきたい」という考えにたどり着きました。
「ひとをつなぐ」「まちをつなぐ」「わざをつなぐ」
ーー京町家を残すために、古川さんが考えられていることを教えてください。
「つながり」をつくることです。どうやって繋がりを作れるかが大事だと思っています。例えば、お金を貸す人と借りる人がいるとして、その関係性だけで話をしていると短いお付き合いしかありません。でも僕は、色んなことを絡めたいんですよね。
現代の工務店って、家を建てて売るイメージが強いと思いますが、昔から僕らは水回りの修繕などで頻繁にお取引先に出入りしていたことから「お出入りさん」と親しまれ、家のアドバイザーみたいなこともしていたんですよ。そのため、時には冠婚葬祭のお手伝いを任されるほど、地域の人々と強い信頼関係を結んでいたんです。だから昔から「つなぐ」ということはやっていたのかなぁって思います。
最近改めて思っているんですが「ひとをつなぐ」とコミュニティが生まれますし、京町家のような景観を残して「まちをつなぐ」っていうのも大事です。もう一つ「わざをつなぐ」というのは職人技のことですね。でもこれは途切れたらなかなか復活しないんです。
だから自分たちは工務店ですけど、日常的なつながりを持つことができる現代の「お出入りさん」を目指しています。
100年かけてお互いにしっかりと繋がっていきたい
ーー近い将来、世の中はどのような社会になっていると思いますか?
まず、ただ売り買いをするだけの仲介業の役割は将来的に無くなると思います。もっと我々のような建設会社もデザインしていくようになると思います。
そういう意味では銀行と似ているかもしれないですね。なのでQUESTIONさんのやりたいことがよく分かります。
あとは会社に来る理由が今よりも無くなって、旅行したり田舎でワーケーションしたりしながら仕事するような社会になっていたらいいと思いますね。
僕も将来は半分中藏で仕事をして、半分は別のことをしようかなと思っています。
これからは今まで以上に早いスピードで社会が変わっていくと思うんです。だから自然を大事にするとか、どうやって生きていくべきかとか、お互いの共通言語みたいなものを長いスパンで考えていきたいですよね。
ーー最後にQUESTIONに期待することはありますか?
「つなぐ」ことですね。京信さんには以前に二条城周辺朱雀エリアを人の集まる魅力的な地域にしようという趣旨で僕たちと地域の人をつなげていただいたような取組を期待します。
短期的に自分たちが儲けたいから動くのではなくて、100年かけてお互いにしっかりとつながっていきたいですね。
(取材・文:QUESTION 高木)
<パートナー概要>
組織名:株式会社 中藏
Webサイト:https://th-nakakura.co.jp/